シングルセルでの網羅的な解析により明らかとなった特徴的な遺伝子を発現する細胞集団をセルソーターで回収し、がん幹細胞の発生状況を解析したが、各グループ間で大きな差は確認できず、当初の目的である「IL-8依存的に制御されるがん幹細胞」の同定には至らなかった。培養細胞を用いた3次元スフェロイド形成では、実際のがんで見受けられる「細胞の不均一性」を完全には再現できなかったと推測される。 一方、研究の副次的な結果として、発がん性シグナルによるがん幹細胞発生機構が明らかとなった。がんにおいて頻発するRAS遺伝子の変異が下流のシグナル伝達経路であるMAPK経路を活性化することで、細胞周期制御因子CDK1の活性化と翻訳語修飾O-GlcNAc化を誘導し、幹細胞因子SOX2の発現を制御することでがん幹細胞が生じることを発見した。
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