研究課題/領域番号 |
19K16785
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古賀 教将 近畿大学, 大学病院, 助教 (20813314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺癌 / EGFR変異 / TKI耐性 / 小細胞転化 |
研究実績の概要 |
小細胞肺癌への形質転換モデルを作成する第一段階として、本年度はまず、EGFR変異肺癌細胞株であるPC9 (Exon 19 deletion)、HCC827 (Exon 19 deletion)、H3255 (Exon 21 L858R)株に対してCRISPR/Cas9を用いてTP53遺伝子とRb1遺伝子のノックアウトを行なった。まずはリポフェクション法を用いてガイドRNA(gRNA)とCas9のトランスフェクションを試みたが、両者のノックアウトは得られなかった。このため、gRNAとCas9タンパクの両方を発現するレンチウイルスベクターを作成してトランスフェクションを行ったところ、両癌抑制遺伝子がノックアウトされた細胞株を樹立することができた。ノックアウトの確認は、①ターゲット領域周囲のサンガーシーケンスによる遺伝子変異(挿入・欠失)の確認と、②ウエスタンブロットによるp53とRBタンパクの発現低下・消失で確認した。PC9株より 2株、HCC827株より 1株、H3255株より 1株のTP53/Rb1ダブルノックアウト(TP53/Rb1(-/-))細胞株を樹立した。 続いて、これらの(TP53/Rb1(-/-))の各細胞株を用いて、3種類のEGFR-TKI(エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ)に対する耐性株の樹立を行った(計15株)。樹立した耐性株は、親株と比較して各薬剤に20-100倍以上の耐性を持つことを確認した。現在、各耐性株の形態学的特徴ならびに神経内分泌マーカー(Synaptophysin, Chromogranin, NCAM1)の免疫染色ならびにmRNAレベルでの遺伝子発現解析を行い、小細胞肺癌や神経内分泌腫瘍への組織転化の有無を検索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、 CRISPR/Cas9によるTP53、RB1のダブルノックアウト細胞株の作成に6-12ヶ月、それらのEGFR-TKIに対する耐性獲得にはそこからさらに14ヶ月ほどを要する見込みであった。しかし研究開始後12ヶ月の現時点で、上記の通りPC9 2株、HCC827 1株、H3255 1株のTP53/Rb1ダブルノックアウト(TP53/Rb1(-/-))細胞株を作成することに成功した。さらに、EGFR-TKI 3種類(エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ)に対する獲得耐性株についても、計15株を樹立済みである。このことより、In vitroの実験については予定よりも進捗が良好と言える。一方、In vivoの実験に関しては、細胞株をマウス皮下に移植する実験の準備はほぼ完了しており、近日中に開始予定である。
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今後の研究の推進方策 |
各耐性株の神経内分泌マーカー(Synaptophysin, Chromogranin, NCAM1)の免疫染色を完了させ、その評価をおこなう。これらの神経内分泌マーカーについては、mRNA発現レベルを用いた比較もおこなう。これらの結果より小細胞肺癌や神経内分泌腫瘍への組織転化を確認できた耐性株について、マウス皮下への移植により腫瘍形成能を確認するとともに、小細胞肺癌に対する標準治療である化学療法の効果を検証する。さらに、小細胞肺癌への形質転換を確認できた各耐性株について、網羅的遺伝子発現解析を行い、親株と比較することで、小細胞肺癌や神経内分泌肺癌への形質転換に関与する遺伝子学的要因を探索し、治療ターゲットとしての可能性を検証する。
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