研究課題/領域番号 |
19K16790
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
板橋 耕太 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 特任研究員 (10828990)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
固形腫瘍局所には幅広いT細胞受容体(TCR)レパートリーのCD8陽性T細胞が浸潤している。しかしながら、がん抗原への親和性の階層性の観点から、腫瘍浸潤CD8陽性T細胞の表現型の変化や、免疫療法への応答の違いを検討した研究は乏しい。 当該年度では、がん抗原のTCRへの親和性の強弱が腫瘍浸潤CD8陽性T細胞に及ぼす影響を検討するためのマウスの腫瘍移植モデルの樹立を進めた。抗原に対するTCR親和性が高い腫瘍浸潤CD8陽性T細胞では、IFNγやTNFαといったサイトカイン産生能が低下しており、深い疲弊状態に至っていることが示唆された。LCMV慢性感染モデルでは、CD8陽性T細胞の疲弊に関わる転写因子として、EOMESやT-betなどの転写因子が知られているが、今回の実験系ではこれらの転写因子の蛋白発現には有意な差は検出されず、腫瘍モデルにおいては、他の転写因子やシグナルが、この「深い疲弊状態」に関与していると推察された。 次に、抗原に対するTCR親和性が異なる腫瘍浸潤CD8陽性T細胞のトランスクリプトーム解析とオープンクロマチン解析を行うことによって、深い疲弊状態に分化させる因子の同定を進めた。しかしながら、TCR親和性が低いCD8陽性細胞に関しては、腫瘍中での絶対数は非常に少ないため、トランスクリプトーム解析、オープンクロマチン解析を行うことができなかった。このため、十分な腫瘍浸潤CD8陽性細胞を採取できるよう、マウスの実験系の再検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗原に対するTCR親和性が高い腫瘍浸潤CD8陽性T細胞では、深い疲弊状態に至っていることを明らかにした。TCR親和性が低いCD8陽性細胞に関しては、腫瘍中での絶対数は非常に少なく、トランスクリプトーム解析やオープンクロマチン解析が困難であり、系の再検討が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
がん抗原に対するTCR親和性が高い腫瘍浸潤CD8陽性T細胞が、深い疲弊状態に至る機序について、トランスクリプトーム解析とオープンクロマチン解析を実施して解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬購入の際の端数であり、来年度の試薬購入にあてるため。
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