研究課題
腫瘍抑制microRNA let-7の制御因子の探索を行い、候補遺伝子としてLetRF-1(TruB1)を同定し、その分子生物学的な機序と腫瘍抑制の効果を検証した。免疫沈降法やCLIP解析により、TruB1はmicroprocessorであるDGCR8と結合してcomplexを形成している可能性が示唆され、DGCR8とlet-7の結合を促進していることが明らかとなった。TruB1のノックダウンおよび過剰発現によってlet-7のprocessingが正に制御されていた。TruB1はtRNA修飾酵素遺伝子の一つであり、その酵素活性機序の影響を探索したところ、TruB1はその酵素活性を失活した変異体においてもlet-7のprocessingの促進作用が見られた。さらに、TruB1の過剰発現によって細胞増殖の抑制が見られ、let-7の抑制によってその傾向が一部キャンセルされた。Xenograft mouse modelを用いた腫瘍移植の系では、TruB1の抑制によって腫瘍の増殖促進が認められた。以上から、TruB1-let-7 axisによる腫瘍抑制機構の存在を明らかにしてきた。
1: 当初の計画以上に進展している
TruB1-let-7 axisによる腫瘍抑制機構の存在を明らかにすることを目標に研究計画を遂行しており、現在のところ以下を明らかにしている。1)TruB1によるlet-7のprocessing機構を解明、2)TruB1の酵素活性機構の関与の詳細を解明、3)TruB1-let7 axisによる腫瘍抑制効果をin vitroおよびXenograft modelで解明。これらの成果を欧州分子生物学会雑誌(EMBO J)へ発表した。マウスモデルの実験も遂行し、これらがlet-7に依存的であることを示すために、RNA干渉のin vivoにおける導入を予定し、現在のところ条件検討は順調に進んでいる。さらに修飾酵素遺伝子の2次的機能として生物学的に興味深い現象を明らかにしており、今後の新たな研究に向けたシーズも得られている。
マウスモデルの実験も遂行し、これらがlet-7に依存的であることを示すために、RNA干渉のin vivoにおける導入を予定し、現在のところ条件検討は順調に進んでいる。さらに修飾酵素遺伝子の2次的機能として生物学的に興味深い現象を明らかにしており、今後の新たな研究に向けたシーズも得られている。tRNA修飾酵素遺伝子全108遺伝子について、TruB1と同様の効果が見られるか否かを網羅的に探索するため、本研究計画で実施したスクリーニング結果を参照し、候補遺伝子の探索を行う。
研究は順調に進捗したものの、今般のコロナ禍によって納品制限(RIなどの海外輸入品などは納品日の制限がかかっていた)などの事象があり、次年度使用額が生じた。次年度に有効に活用し、更に研究を推進する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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