研究課題
悪性腫瘍は本邦における死亡数の第1位である。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬、CAR-T療法等の登場で飛躍的に治療成績が向上したが、なお治癒は困難である。MicroRNAは約22塩基の短鎖RNAであり、相補配列を持つmRNAを分解するRNA干渉を担っている。中でもlet-7 familyは初めて同定されたmicroRNAの一つであり、K-RasやC-Mycなどがん遺伝子を抑制し、腫瘍の増殖や幹細胞性を抑制する。肺癌、白血病など多くの悪性腫瘍において中核的な腫瘍抑制microRNAとして機能している(Takamizawa, et al. Cancer Res, 2004)。このlet-7はRNA結合タンパクLin28やKSRPなどにより制御されているが、これらでは制御されないlet-7 familyもあり(Robinson, et al. Cell Reports, 2015)、その全貌は不明である。申請者はルシフェラーゼレポーター解析を応用することで、Gene OntologyからRNAへの結合が予測される1469遺伝子を標的として、let-7の発現を上昇あるいは低下させる新たな遺伝子の機能的スクリーニングを行い、新たな制御因子TruB1など複数の候補遺伝子を同定した。このうちtRNA修飾酵素TruB1が、その酵素活性とは独立してlet-7を上昇させることを明らかにした。この機構は、酵素活性という既存の機能のみに注目した研究方法では見出すことが困難であったが、microRNAの機能的スクリーニングとRNAへの結合を網羅的に解析するCLIP法の組み合わせによって初めて見出すことが可能となった。現在、今研究手法を応用し、microRNAスクリーニングで得られた他の候補遺伝子や、その他RNA結合タンパク質に対する網羅的な解析を行うことが可能となっている。
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Nat Commun
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