本研究は、がんに対するDDS製剤の開発にあたり細胞内への抗がん剤集積量を増大させるため、PET核種由来のラジカルにより活性化される細胞膜透過性ペプチド(Activatable Cell Penetrating Peptide; ACPP)を開発し、PET薬剤を介したDDS製剤の細胞内取込み増大機構の構築を目的とする。PET薬剤およびACPP修飾DDS製剤が異なる機序で腫瘍集積性を有し、両者が共局在した病変部位における相乗的な細胞傷害作用増大を狙うもので、極めて特異性の高い治療が可能になると期待される。 上記の目的を達成するため、DDS製剤としてラクトソームを用いた。ラクトソームに対して修飾させるCPPの設計・合成を行い、HPLC精製により目的とするCPPを得た。DDS製剤に対してポリマー量比として10または20%のCPPを修飾させ、がん細胞への取り込みを蛍光イメージングにより調べた。その結果、1種のCPPにおいて顕著な細胞取り込みを認め、その程度は修飾するCPPの量依存的に増大した。また、CPP修飾ラクトソームの坦がんマウス投与後の生体内分布をin vivo蛍光イメージングにより調べた結果、 CPP担持の有無にかかわらず投与24-48時間後をピークとしてEPR効果を介して腫瘍へ高く集積することが分かった。以上の結果より作成したCPP修飾ラクトソームを活性化体として用いることが適切であると考えられる。なお、2019年度は本学のRI施設の改修工事により放射性核種を用いた検討を実施できなかった。
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