研究課題
本研究は、様々ながんで腫瘍抑制的な働きが注目されているN-myc downstream regulated gene 1(NDRG1)に着目し、膠芽腫におけるNDRG1標的による患者予後を改善する新しいGBM治療を創出することを目的とした。まず、免疫染色で患者腫瘍のNDRG1発現を解析した。NDRG1発現は患者の生存期間と正に相関することを明らかにした。また膠芽腫細胞のNDRG1発現を変化させ、増殖、細胞周期、シグナル活性をフローサイトメトリ、イムノブロットで解析した。NDRG1発現抑制は膠芽腫細胞増殖を亢進し、細胞増殖に関連するシグナル分子のGSK3β、AKT/S6活性を促進した。この効果はGSK3β阻害剤で相殺された。一方でNDRG1過剰発現はGSK3β、AKT/S6活性や細胞周期進行、増殖を抑制した。NDRG1発現上昇はGSK3β蛋白の、GSK3βによるリン酸化はNDRG1蛋白の安定性を低下させることを明らかにした。さらにDifferentiation inducing factor-1(DIF-1)は膠芽腫細胞のNDRG1発現を上昇させ、膠芽腫細胞の増殖を抑制することを明らかにした。最終的にDIF-1はマウス血液脳関門を通過し脳内に分布可能で、マウス脳内同所移植膠芽腫のNDRG1発現を誘導し、増殖を抑制することも明らかにできた。まとめると、NDRG1は膠芽腫細胞において、GSK3βの発現制御を介して細胞増殖シグナルであるAKT/S6シグナル活性を抑制していることを明らかにした。DIF-1による膠芽腫のNDRG1発現誘導はマウス脳内移植膠芽腫の増殖を抑制できることを明らかにした。DIF-1によるNDRG1を標的とした治療は膠芽腫患者の予後を改善しうる治療である。
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Cancer Research
巻: 80(2) ページ: 234-248
10.1158/0008-5472.CAN-19-0438.