研究課題
悪性中皮腫は極めて予後不良な腫瘍であり、LATS2(large tumor suppressor kinase2)、BAP1(BRCA associated protein 1)などがん抑制遺伝子が原因遺伝子として報告されている。一般的にがん抑制遺伝子に直接的に働きかける抗がん剤の開発は難しいとされ、合成致死を応用した治療戦略が注目されている。本研究課題では、LATS2変異を有した悪性中皮腫に対する合成致死標的として見出したSMG6の有用性を明らかにすることを目的とした。はじめにMeT-5A(ヒト正常中皮細胞)にLATS2をノックアウトした細胞(LATS2 KO細胞)を樹立し、siRNAによってSMG6を発現抑制したところLATS2 KO細胞でのみ細胞生存率の低下が認められた。次に合成致死誘導機構を明らかにするためLATS2とSMG6の関連シグナルを解析した。LATS2をコアメディエーターとするHippo経路のアポトーシス誘導因子の転写活性とSMG6と相互作用するテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)によって制御されるATM依存的な細胞死が協働的に亢進していることが示された。さらにLATS2KO細胞に対してTERT阻害剤を添加することで、DNA損傷を伴った合成致死が認められた。SMG6/TERTの合成致死標的としての有効性をin vivoで検討するため、LATS2変異を有するヒト悪性中皮腫株Y-MESO-27を用いて悪性中皮腫担がんマウスモデルを作製した。担がんマウスにおいてSMG6の発現抑制によってがんの生着抑制が、またTERTの阻害剤添加によってがんの退縮及びマウス生存率の延長が認められた。本研究課題によってLATS2変異を有した悪性中皮腫に対してSMG6/TERTの分子標的としての有用性が認められ、合成致死誘導機構の一端を明らかにした。
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Annals of the New York Academy of Sciences
巻: - ページ: -
10.1111/nyas.14980
Cell Death Discovery
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41420-022-01232-w