本研究は、人工知能の画像認識能力を応用し、術前化学放射線療法(NA-CRT)が施行された直腸癌症例における、事前治療効果予測と、完全奏功症例の同定能力を評価することを目的とした研究である。NA-CRTを施行された直腸癌の10~15%程度に癌が完全に消失する「完全奏功」例を認めることが分かっており、そのような症例では「Watch and Wait Strategy」として手術をせずに経過観察することが許容されることが報告されており、そのような症例においては大幅な生活の質の向上が見込まれる。しかし、一部の症例においては、NA-CRT中に癌が進行する症例を認めることや、またCRT治療に伴う線維化や浮腫が手術を困難にするといったデメリットも持ち合わせる。よって、化学放射線療法の効果を事前に予測することが可能であれば、一層その治療効果、効率を高めることが出来ると考えられる。我々は今回、帝京大学医学部付属病院において、NA-CRTに引き続き手術治療を行った直腸癌90症例のNA-CRT前後での内視鏡画像計5255枚を集積し、機械学習を用いてNA-CRTの効果予測を行った。効果予測能の評価はCross-Validation法を用いて、ROC(receiver operating characteristics)曲線を描き、AUC(area under the curve)を算出して行った。その結果、病理学的完全奏功の予測能は、画像ベースでは、NA-CRT前画像を用いた場合AUC0.792、NA-CRT後画像を用いた場合AUC0.841であり、患者ベースでは、NA-CRT前画像を用いた場合AUC0.857、術後画像を用いた場合AUC0.950と、良好な結果を示した。当年は本研究の成果を学会で発表、論文投稿した。
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