研究課題/領域番号 |
19K16811
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
片桐 誠一朗 東京医科大学, 医学部, 助教 (50532298)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | t-MN / CHIP / targeted deep sequencing |
研究実績の概要 |
治療関連骨髄性腫瘍 (therapy-related myeloid neoplasm: t-MN)は化学療法や放射線治療後を行った患者において予後に直結する重要な合併症である。近年、骨髄異形成症候群の疾患背景としてclonal hematopoiesis of indeterminate potential (CHIP)の存在が注目されている。治療関連骨髄性腫瘍の一次腫瘍として造血器腫瘍では悪性リンパ腫が最も多い疾患であるが、様々な抗癌剤を使用するため、t-MNの発生機序は一元的ではない。本研究では次世代シークエンス技術を用いて、特定の部位に限って高重複度で塩基配列解析を行い (Targeted deep sequencing)、悪性リンパ腫診断時の骨髄におけるクローン性造血を解析することで、t-MN発症の潜在的リスクを予測することを目的とした。 初年度では当院で悪性リンパ腫に対して治療した後にt-MNを発症した症例を対象とし、悪性リンパ腫発症時の骨髄単核球とt-MN発症時の骨髄単核球、リンパ節病変の病理ブロックを用いて、targeted deep sequencingによる検討を行なった。その結果tMNを発症した症例の80%で悪性リンパ腫初診時の骨髄ですでにクローン性造血が存在することが明らかになった。さらに予想に反して、悪性リンパ腫発症時に認められたクローン性造血の主要クローンにはその後発症するt-MNと共通するクローンは一例にも認められなかった。この結果は化学療法前のクローン性造血の存在は化学療法により新規のクローンが出現しやすいようなクローンの不安定性がある可能性を示唆していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に目的とした実際にtMNを発症した症例における検討は達成できている。次年度では確立した実験系を用いて、t-MNを発症していない症例での検討を計画する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で確立した手法を用いて、悪性リンパ腫治療後にt-MNを発症していない症例を対象に検討を行う。初年度の結果と合わせて、悪性リンパ腫診断時の骨髄検体におけるクローン性造血の有無、また検出される遺伝子変異がt-MN発症に関連しているかを評価する。これらの結果をもとに今後、新規の悪性リンパ腫症例を対象とした治療前後での骨髄検体を用いた化学療法の強度とt-MN発症リスクを評価する前向き試験に向けたプラットホームを作成する
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において参加した学会が国内であったため、旅費が研究計画の予算金額より低くなったことが理由として挙げられる。次年度では対象症例数が初年度よりも多くなると予想され、次年度繰越になった金額を使用できると思われる。また論文投稿を予定しており、英文校正費用および投稿費がかかると思われるので、次年度繰越となった金額については論文投稿関連費に補充する予定である。
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