進行再発非小細胞肺癌初回治療例を対象として、診療録を用いた多施設共同後方視的研究を行った。初回治療開始前総腫瘍量と初回治療効果の関連性を多変量解析ならびにpropensity-score weighting法を含めた統計学的手法により解析した。まず、PD-1阻害薬単独療法を行った患者約110例程度が、主解析対象集団として集積された。また、対照群として殺細胞薬のみで治療した群の臨床データも110例程度を集積し、治療効果と腫瘍量の関連性を検討した。さらに、探索的な解析対象集団として、PD-1阻害薬+殺細胞薬で治療を行った例も約50例程度集積して、腫瘍量と治療効果の関連性を同様に検討した。 殺細胞薬治療群やPD-1阻害薬+殺細胞薬群においては腫瘍量と治療効果の明らかな関連性は認められなかった一方で、PD-1阻害薬単独治療においては腫瘍量と治療効果は強い関連性が認められた(腫瘍量が多いとPD-1阻害薬単独治療効果は不十分であった)。これらの結果は、Log-rank検定、Cox-比例ハザード解析ならびにpropensity-score weighted解析、Restricted median survival timeなどの統計学的手法、また複数の妥当なカットオフ値による再現性検討のいずれにおいても一貫した結果が得られた。 さらに、50例程度の治療開始前腫瘍組織検体を用いて、nCounter IO360を用いた遺伝子発現解析を行った。腫瘍量が多い群では、腫瘍量が少ない群と比較して、リンパ球を中心とした腫瘍内免疫活性は変わらなかったものの、腫瘍関連マクロファージ浸潤や血管新生などの腫瘍免疫抑制性シグナルが亢進していることが示された。 以上より、腫瘍量が多い場合には、上記のような特定の免疫プロファイルによりPD-1阻害薬単独治療への耐性を示すことが示唆された。本結果は英文雑誌に投稿中である。
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