研究実績の概要 |
頭頚部癌に対しては、従来からシスプラチンなどの抗癌剤が使用されてきた。しかし、この治療法は特異性が低く、特に固形癌において完全寛解はほぼ期待できない。近年盛んに開発が進んでいる分子標的薬は、主に血液癌や肺腺癌・腎癌・乳癌など一部の癌に適応が限られており、頭頚部癌を含む他癌種においては未だ有望な標的薬がほとんど開発されていない。 最近、癌細胞のなかでも造腫瘍性・治療抵抗性の高い亜集団(癌幹細胞)の同定が進み、それを標的した治療法の開発が盛んに行われている。 これまで、申請者らは頭頚部癌の中でも、特に予後の悪い下咽頭癌を用いて新規治療標的の探索を行ってきた。その結果、申請者らは、神経成長因子受容体CD271高発現癌細胞が、高い造腫瘍能を有することを見いだした(PLoS One, 013, Sci. Rep., 2016)。このことから、CD271高発現細胞を標的とすれば、癌組織全体が縮小することを期待できる。そこで、私たちは抗CD271抗体を独自に樹立し、ヒト化したうえで、担癌マウスに投与した。その結果、期待通りCD271強制発現細胞においては良好な腫瘍縮小効果を認めた(図1)。さらには、下咽頭癌患者由来異種移植マウス(PDX)に抗体を投与すると、CD271陽性細胞は全体の20%程度しかないにもかかわらず、腫瘍組織全体が縮小し、CD271陽性細胞も減少していた(図2、論文投稿中)。以上のことから、下咽頭癌においてCD271を標的とした治療が可能であるというproof of conceptを確立した。しかし、縮小効果は完全ではなく、更なる検討が必要だと考えた。本課題では、CD271標的治療のproof of conceptをさらに蓄積するための検討を進める。 本年度はNK細胞が効率よく腫瘍に到達できるようになるために、遺伝子改変NK細胞を作出した。
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