研究課題/領域番号 |
19K16819
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
谷岡 真樹 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (60573045)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BCRA関連癌 / 重複癌 / BRCA1/2 / 相同組み換え異常 / HRD / 全エクソン解析 / 遺伝子シグネチャー |
研究実績の概要 |
代表者は全エクソン解析から得られるコピー数変化と遺伝子シグネチャーデータを組み合わせ、HRDの代替指標としての生殖細胞系BRCA1/2変異の新規予測モデルHRDualを開発した。国立がん研究センターにおける乳癌・卵巣癌患者にHRDualを適用し、PARP阻害薬の効果を予測可能であるか確かめる。効果予測可能であれば、さらに生殖細胞系BRCA1/2変異を有しない乳癌患者40名の中にHRDualスコア高値となる腫瘍の存在を示し、BRCA1/2変異がなくともPARP阻害薬が奏効する乳癌患者を選別する。 2019年度は文部科学省先進ゲノム支援を受けて、BRCA関連癌である乳癌、卵巣癌、膵臓癌を重複発症した患者27名の腫瘍DNAおよび生殖細胞DNAの全エクソン解析を東京大学付属病院で行った。 乳癌・卵巣癌重複患者でのBRCA1/2遺伝子変異頻度は39 - 57%と乳癌全体の8%程度より数倍高いため、この重複癌のHRDualを算出することでBCA1/2変異のある乳癌・卵巣癌・すい臓がんにおける相同組み換え異常レベルを把握できる。 再度、文部科学省先進ゲノム支援を受けたため、引き続き重複癌患者の全エクソン解析を進める。さらにBRCA1/2変異を有し、PARP阻害薬投与された約20名程度の乳癌、卵巣癌の全エクソン解析を行う予定である。HRD、遺伝子シグネチャー、Clonality解析を行い、同一の生殖細胞から生じた重複腫瘍間の不均一性を解明し、PARP阻害薬が両方の重複癌に適応可能か治療戦略を提案する。また全ゲノム解析により重複の原因となる新規生殖細胞遺伝子変異を同定する。さらに1,650名の乳癌患者と比較し、2番目のBRCA関連癌発症を予想する新規遺伝子変異を同定し、その早期発見を可能とし同時にBRCA関連癌の新規治療標的を見出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は文部科学省先進ゲノム支援を受けて、BRCA関連癌である乳癌、卵巣癌、膵臓癌を重複発症した患者27名の腫瘍DNAおよび生殖細胞DNAの全エクソン解析を東京大学付属病院で行った。現在データを解析中である。乳癌・卵巣癌重複患者でのBRCA1/2遺伝子変異頻度は39 - 57%と乳癌全体の8%程度より数倍高いため、この重複癌のHRDualを算出することでBCA1/2変異のある乳癌・卵巣癌・すい臓がんにおける相同組み換え異常レベルを把握できる。また乳癌と膵臓癌、乳癌と卵巣癌といった極めて発症の稀な重複癌を対象としている。この集団では網羅的遺伝子解析の報告がないため、胞の全エクソン解析から新規遺伝子変異を見出すことも期待している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は卵巣癌大規模データセットにおいてHRDualが生殖細胞系BRCA1/2変異を予想できるか確認する。また再度、文部科学省先進ゲノム支援を受けたため、引き続き重複癌患者の全エクソン解析を進める。さらにBRCA1/2変異を有し、PARP阻害薬投与された約20名程度の乳癌、卵巣癌の全エクソン解析を行う予定である。乳癌と膵臓癌または乳癌と卵巣癌等、同一患者に重複発症したBRCA関連癌の全エクソン解析を基に HRD、遺伝子シグネチャー、Clonality解析を行い、同一の生殖細胞から生じた重複腫瘍間の不均一性を解明し、PARP阻害薬が両方の重複癌に適応可能か治療戦略を提案する。国立がん研究センターで12年間にBRCA関連癌と診断した18,378名中、組織利用可能な BRCA関連癌重複患者は50名と極めて希少ある。乳癌先行例の10年生存率は63%と、当院手術可能乳癌の93%より予後不良である。臨床試験から除外され標準治療はなく、BRCA1/2以外の遺伝子変異は不明である。 Clonality解析により重複腫瘍間に共通する、新規体細胞遺伝子変異を同定できる。また全ゲノム解析により重複の原因となる新規生殖細胞遺伝子変異を同定する。さらに1,650名の乳癌患者と比較し、2番目のBRCA関連癌発症を予想する新規遺伝子変異を同定し、その早期発見を可能とし同時にBRCA関連癌の新規治療標的を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は文部科学省先進ゲノム支援により全エクソン解析費用が実質援助されたため、計画と比較して残額が生じた。残額55万円は次年度に繰り越し、2020年度分と合わせ、約全エクソン解析費用とする
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