研究課題/領域番号 |
19K16821
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研究機関 | 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所) |
研究代表者 |
稲野 将二郎 株式会社関西メディカルネット(関西電力医学研究所), 臨床腫瘍研究部, 上級特別研究員 (70811199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子標的治療 / エクソソーム / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、RASなど、分子標的薬での阻害が困難な細胞内の蛋白に対する分子標的療法の基礎を創出することである。そのため、VHH抗体(単鎖抗体)を用いて任意の細胞内蛋白を標的とし、それに融合させる形でE3(ユビキチン化酵素)とエクソソーム移行配列を加えたキメラ蛋白を作成する方針とした。これにより、エクソソームにパッケージされたキメラ蛋白が標的細胞に取り込まれ、機能を発揮することが可能になる。 まず、EGFP陽性細胞に対して上述のキメラ蛋白を発現させて15種類のE3(ユビキチン化酵素)でスクリーニングを行い、うち2種においてEGFP分解能を確認した。この分解反応がユビキチン化を介したものであり、プロテアソーム阻害剤で阻害された。さらに、この細胞の上清からエクソソームを精製して、エクソソーム内にキメラ蛋白が十分に含まれていることを確認した。 さらに、既報をもととして、エクソソーム産生を更新させるSTEAP3を、さらにエクソソーム取り込み後のキメラ蛋白の細胞質へのリリースを促すCX43を過剰発現させた293Tを作成した。この細胞株を、同定したキメラ蛋白をdoxcycline依存性に発現するよう改変し、精製したエクソソームを解析したところ、細胞内に存在するキメラ蛋白の20%以上がエクソソームに移行していることが確認できた。今後は、精製したエクソソームを用いてEGFPを分解できるかどうかの確認、そしてEGFP陽性細胞と、キメラ蛋白を含んだエクソソームを産生する細胞の共培養での分解能力を確認する。 上記が問題なく進行すれば、活性型KRASを標的としたnanobodyなど癌治療に応用が期待できる細胞内タンパクを標的として、同様の実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクリーニングのために予想より多くん時間を要したものの、そのほかは概ね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のようにEGFPを標的とした基礎的実験を終了した後、多くの癌腫においてみられるドライバー変異を標的としたnanobodyを作成し、ユビキチン化酵素とエクソソーム移行配列を付加したキメラ蛋白が分解能力を有しているかどうかを検証する。代表的なものとしてKRASに着目する。一般的な細胞株レベルで予想通りの結果となれば、複数の癌細胞株に精製したエクソソームを添加し、シグナル伝達への影響、細胞死を惹起する能力を検証する。細胞株レベルで治療効果が期待できそうであれば、マウスモデルでの実験準備を進めるとともに、細胞製剤を見据えて間葉系幹細胞でのエクソソーム産生を目指した基礎的検討を開始する。
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