スクリーニングにより、GFPを分解し、かつエクソソームに効率よく移行するキメラ蛋白を構築した。さらにGFPの認識部位を置換することにより、RhoAおよびKRASの活性化型を選択的に分解することに成功した。 次にキメラ蛋白を含むエクソソームを293T細胞に発現させ、活性化型KRASを導入した293Tに取り込ませることで、エクソソームを解したKRASの分解を達成することができた。しかしながらKRASの分解は不完全であり、一因としては取り込まれたエクソソームがエンドソームで分解されるため細胞質に達する比率が低いことが考えられた。これを解決するため、膜貫通蛋白として知られるポリアルギニンペプチドをエクソソーム表面蛋白に付加したところ、より効率の良い分解を達成することができた。 次に、膵癌を用いて複数の基礎実験を行った。膵癌は多くがKRASに依存性を持つ。5つの膵癌細胞株を用いて解析を行ったところ、キメラ蛋白の発現により全ての細胞株においてKRASの分解が確認できたものの、KRASへの依存性は様々であった。具体的には、KRASの分解により全ての細胞株で高度に増殖が抑制されたものの、死滅したのは1つの細胞株、増殖の完全な停止が得られたのが2株、緩やかな増殖を示したものが2株であった。このうちKRASにより少なくとも増殖の停止以上の効果が得られた3株を用いてキメラ蛋白産生293T細胞との共培養を行ったところ、高度な増殖抑制が達成され、一致してKRAS初原料の相対的定価が見られた。
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