研究課題/領域番号 |
19K16827
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野口 卓郎 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40814554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 自然免疫応答 / 核酸受容体 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
一部のがん患者は、非感染状態でも発熱や倦怠感といった全身性炎症反応を呈する。これらは腫瘍熱、悪液質と呼ばれる。また、全身性炎症反応自体が、がん薬物療法の治療効果に対して負の側面を持つことが示唆されている。近年、担がん患者の末梢血中には腫瘍細胞由来DNA(cell-free DNA: cfDNA)が浮遊していることが明らかとなってきた。免疫学的には DNAは免疫細胞のパターン認識受容体を介して炎症を惹起し、生体防御に関わる強力な免疫刺激性分子である。そのため、本研究では、がん患者における末梢血浮遊DNAの全身性炎症反応への関与を解明することを目的とする。 cfDNAに対する遺伝子診断はリキッドバイオプシーと呼ばれ研究が進んでいるが、その抽出方法や精度についての検証は十分に行われていない。そのため、本研究においても、がん患者臓器横断的な末梢血cfDNA濃度の評価から開始することとした。臓器横断的にがん患者14人から22末梢血液検体を得た。cfDNAを抽出し、濃度を定量した。転移性肺癌患者においては、cfDNA濃度中央値10.3ng/mLであった。進行肉腫患者においては、cfDNA濃度中央値6.2 ng/mL であった。その他がん患者においては、cfDNA濃度中央値4.8 ng/mLであった。次に、次世代シークエンサー(Thermo Fisher Scientific社 IonPGM Ion318Chip)を用いて粘液線維肉腫症例におけるcfDNA(20ng)のバリアント解析を行った。検出感度0.13%条件下で、0.36%のアリル頻度のTP53遺伝子変異を検出した。この成果を第17回日本臨床腫瘍学会総会で口頭発表した。以上より、磁気ビーズを用いたがん患者末梢血cfDNA抽出系を確立し、がん患者においてがん細胞由来cfDNAが臓器横断的に抽出可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、臓器横断的にがん患者においてがん細胞由来末梢血浮遊DNAが存在することを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はcfDNAが免疫細胞核酸受容体を介して誘導する免疫応答について検証する予定である。免疫細胞として、がん患者または健常人単球由来マクロファージを使用する予定である。また、cfDNAとして患者末梢血由来cfDNAおよび培養細胞抗がん薬処理下抽出されたcfDNAを用いていく予定である。そして、症例を蓄積し、臨床情報とcfDNA濃度の関連性を評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度施行した、末梢血浮遊cfDNAの測定が安価に行えたため。 次年度の研究計画を予算通りに行うことに加えて、次年度消耗品購入の使用額にあてることとする。
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