研究課題/領域番号 |
19K16829
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高野 悠子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (30831375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乳がん / 共同意思決定 / 術後薬物療法 |
研究実績の概要 |
近年、乳癌治療は多様化し、患者はあらゆる場面で意思決定を余儀なくされている。また、様々な治療法が標準治療として行われるようになっている。治療法の決定には、医療者と患者でのshared decision making(SDM)も重要視されるようになっている。海外では、SDMとQOCやQOLとの関連が報告されている。しかしながら、本邦における乳癌術後薬物療法決定におけるSDMの実践状況に関する報告は少ない。そこで、名古屋大学医学部附属病院における乳がん術後薬物療法決定におけるSDMの実践状況について調査を行った。2020年10月より2021年10月までに名古屋大学医学部附属病院で手術を行った患者のうち、術後薬物療法を必要とされた患者に対して、SDM-Q-9質問紙票を用いて治療法を決定する上で患者が重要と考える事項についてアンケート調査を行った。担当医師にはSDM-Q-DOCを用いて調査した。現在までに61名の患者から返答をえた。SDM-Q-9の得点は化学療法ありより化学療法なしのほうが高い傾向がみられたが有意差はなかった。その他年齢、ステージ、閉経状態によってSDM-Q-9およびSDM-Q-9の得点に有意な差は認められなかった。薬物療法を決定する上でのアンケート調査(再発リスク、有害事象、仕事や家庭との両立、病院への通院、入院に関する質問)も並行しておこなったが、いずれの項目においてもSDMの実践状況との相関は認められなかった。現在までの解析ではSDM-Q-9やSDM-Q-DOCの結果は過去の報告と同様であったが、治療法、年齢、ステージ、閉経状態によって有意な差を認めなかった。今後、増加する乳癌サバイバーにとってSDMが真に有効であるのかをさらに評価する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は主に患者に対するアンケート調査を行うものであるが、新型コロナウィルスの蔓延のため、患者との実際の診療以外での接触を行うのが難しい状況があった。また、乳がんの周術期薬物療法が、以前は術後の治療が中心であったが、トリプルネガティブ乳がん、HER2陽性乳がんといった一部の乳がんでは、術前治療を行って、治療効果を見ていくことが標準的治療の一つとなりつつあるので、該当患者が想定よりも少なくなっているため該当患者数が当初の予定よりも少なくなっているためである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中に集積されたデータをまとめ、学会及び論文にて報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、アンケート調査の回収が予定通りに進まなかったため。次年度は学会発表および結果の論文投稿を予定しており、論文投稿に関わる費用として使用する予定である。
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