研究課題
これまでの研究で研究代表者は、小児の急性骨髄性白血病(AML)で高頻度にみられる染色体異常:t(8:21)を有するAMLにおいて以下の点を明らかにしてきた。①CCND2遺伝子の変異や高発現が他の病型と比較して高頻度でみられること②t(8;21)AML細胞においてCCND2遺伝子をノックダウンすることで、細胞周期(G1→S)および細胞増殖の有意な抑制がみられること③t(8;21)AML細胞株は、他の病型のAML細胞株と比較してCDK4/6阻害剤(Palbociclib, Abemaciclib)に高い感受性を示すこと④CDK4/6阻害剤の添加により、t(8;21)AML細胞においてオートファジーが誘導されること当該年度は、悪性腫瘍においてオートファジーが薬剤耐性メカニズムとして機能することが知られていることを踏まえ、CDK4/6阻害剤とオートファジー阻害剤の併用効果について検証した。t(8;21)AML細胞株において、オートファジー阻害剤(Chloroquine)を単独で添加した場合ではアポトーシス細胞割合の増加はみられなかったが、CDK4/6阻害剤とオートファジー阻害剤を同時に添加した場合、アポトーシス細胞割合は有意に増加した。また、小児t(8;21) AML患者由来のprimary細胞を用いた検討でも、同様の結果が得られた。よって、CCND2の脱制御を伴うt(8;21)AMLの治療においてCDK4/6とオートファジーの両方の阻害が有効である可能性が示唆された。本研究成果に関して米国血液学会(62nd ASH Annual Meeting & Exposition)で発表を行い、論文化(Int J Hematol. 2021 Feb;113(2):243-253.)を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
上述のin vitro実験に加えて、重症免疫不全マウスに白血病細胞を移植したin vivoの系におけるCDK4/6阻害剤とオートファジー阻害剤の併用効果の検証を行っている。現在結果をまとめている段階であるが、in vitroの結果を裏付ける結果を得つつあり、こちらも成果発表が見込まれるため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
In vivoの系におけるCDK4/6阻害剤とオートファジー阻害剤の併用効果を、腫瘍細胞におけるオートファジーやアポトーシスの誘導の程度を評価することで、詳細に解析する。また、t(8;21)AML以外にも、CDK4/6阻害剤とオートファジー阻害剤の併用が有効な病型があるか、検討を行う。
次年度使用額が生じた理由:コロナ禍での学会のオンライン化により、旅費が全くかからなかったため。また、消耗品を節約して使用したため。使用計画:実験の消耗品費用、英文校正費、論文掲載料などに充てる。学会が現地開催されるようであれば、国内外の学会参加費にも支出予定である。
すべて 2022 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件)
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