研究実績の概要 |
今年度は、まず昨年度に行なった肺腺癌におけるCD155発現解析について、追加解析を行なった。 CD155陰性と陽性、PD-L1陰性と陽性による4群比較を行なった。CD155およびPD-L1共陽性は共陰性と比較して、無再発生存が予後不良であった(HR = 1.91, 95%CI 1.04-3.51; P = 0.0344)。CD155およびPD-L1共陽性は共陰性と比較して、全生存が予後不良であった(HR = 2.62, 95%CI 1.39-4.95; P = 0.0021)。 また、EGFR遺伝子変異有無別に予後解析を行なった。 EGFR遺伝子変異陽性症例において、CD155発現による予後の差は認められなかった(無再発生存 HR = 1.50, 95%CI 0.76-2.95; P = 0.2418: 全生存 HR = 1.08, 95%CI 0.40-2.91; P = 0.8721)。しかし、EGFR遺伝子変異陰性症例において、CD155陽性は予後不良であった(無再発生存 HR = 1.32, 95%CI 0.93-1.87; P = 0.0424: 全生存 HR = 1.34, 95%CI 0.95-1.90; P = 0.0225)。これまでの結果から、肺扁平上皮癌およびEGFR野生型肺腺癌においてCD155陽性は予後不良であり、CD155発現が腫瘍細胞増殖に関与している可能性が示唆された。 細胞株実験については、昨年度に引き続き細胞株HCC4006における定常時およびエルロチニブ投与時のCD155発現の測定を行なった。エルロチニブ投与後、CD155発現の低下を認めた。しかし、再現性が綺麗には取れず実験系確立に難渋し、十分な結果が得られず、断念した。 非小細胞肺癌におけるCD155発現の意義に関する解析までとなり、新規複合免疫療法開発に向けた検討までは実施できなかった。
|