研究実績の概要 |
各卵巣癌サブタイプ、漿液性癌、類内癌、粘液性癌、および境界悪性癌および正常卵巣の原発組織の凍結検体210検体を収集し核酸抽出を実施した。従来NET-CAGE法の実施のためには核内RNAの抽出精製を要するが、検体の必要量が多く、腫瘍量に個体差が多い臨床検体においては十分なRNAが得られない欠点があった。そこで条件の最適化のために、収集検体の一部において、同一症例でCAGE法とNET-CAGE法の両方を実施しデータを比較し、簡易型のNET-CAGEを開発した。これにより、従来法よりも少量の検体かつ簡便な手法でNET-CAGEの実施が可能となった。 全検体を用いた解析に関しては現在進行中であるが、先行解析としてCAGE(10検体)ならびに簡易型NET-CAGE(41検体)における解析を完了した。同一検体由来である、CAGEと簡易型NET-CAGEを比較すると、enhancer RNAが簡易型NET-CAGEでより濃縮しており、enhancer解析として優位性を持つことが確認された。これらの解析結果から、すでに19,297のenhancerが検出され、その半分以上(13,035)はFANTOM-NETのエンハンサーアトラスで見つかっていない新規enhancerであった。さらに明細胞癌のデータのみの先行解析であるがFANTOM5プロモーターにおけるmRNAレベルでクラスタリングすると、大きく二つのクラスターに分離することが明らかとなった。現時点では、まだ臨床情報と発現変動遺伝子の紐付けは完了しいていないが、同一の病理組織型でも異なる遺伝子発現分布があり、臨床的サブタイプと相関する遺伝子発現分布の可能性が示唆された。現時点で新規手法による卵巣癌のRNA抽出は完了し、随時ライブラリ作成に進めている。引き続き継続し、卵巣癌のトランスクリプトームアトラスの作成達成を目指す。
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