研究課題/領域番号 |
19K16844
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
阪上 尊彦 久留米大学, 医学部, 助教 (90597402)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 早期診断 / バイオマーカー / エクソソーム / microRNA / 膵液 / 血清診断 |
研究実績の概要 |
膵液から単離したエクソソームから蛋白を抽出し、Western blot法でエクソソーム特異的蛋白の発現を確認した。また、透過型電子顕微鏡およびNanoparticle Tracking Analysisを行い、膵液中エクソソームの存在を確認した。 膵癌細胞特異的microRNAの同定にはmicroRNAアレイを用いた。「3種類のヒト膵癌細胞株(Panc-1、BxPC-3、MIAPaCa-2)の培養液中に分泌されたエクソソームから抽出したmicroRNA」および「4名の膵癌患者膵液由来エクソソームから抽出したmicroRNA」の両者に共通して発現が高いmicroRNAから、「2名の非癌患者膵液由来エクソソームから抽出したmicroRNA」を差し引いたところ、15個の膵癌細胞特異的microRNAを同定した。 次に、上記9検体を用いて、microRNAアレイより同定した15個の膵癌細胞特異的microRNAの発現をリアルタイムPCRでvalidationした。その結果、マイクロアレイの結果と整合性の取れたmicroRNAはmiR-XXXXとmiR-YYYYの2個であった。そこで、新規コホートの膵癌患者膵液4検体および非癌患者膵液4検体を用いて、上記2個のmicroRNAに関して、定量的リアルタイムPCRで再現性を確認した。その結果、膵液においてはmiR-XXXXとmiR-YYYYが膵癌細胞特異的なエクソソーム由来microRNAであると結論づけた。 さらに、膵液および血清サンプルがペアで揃っている膵癌患者4検体および非癌患者5検体の血清を用いて、上記2個のmicroRNAに関して、定量的リアルタイムPCRを行った。その結果、miR-XXXXは、膵癌患者血清においても特異的に発現を認め、非癌患者では発現がみられなかったことより、血清診断への導出の可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗状況として、膵液中エクソソームの確認、膵癌細胞特異的microRNAの探索、探索したmicroRNAの多数検体によるvalidationまでは終了している。その結果、膵液中エクソソーム由来miR-XXXXおよびmiR-YYYYは膵癌細胞特異的microRNAである、という新規所見を得た。 また、当初は予定していなかったが、同定したmicroRNAが血清中エクソソームからも検出されるか(血清診断への導出)、に関して検討を行ったところ、miR-XXXXは膵癌患者血清中エクソソームに特異的に発現がみられる、という所見も得ている。 その一方で、同定したmicroRNAの機能解析は今後の課題であり、全体として、やや遅れていると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
1)膵液・血清のペアサンプルが揃った症例数をさらに増やし、検出感度・特異度を確定する。 2)同定したmiR-XXXXおよびmiR-YYYYの機能解析を行う。具体的には、loss-of-function、gain-of-functionの実験系で検討する。これにより、これらのmicroRNAがどのように癌細胞自身や癌を構成する微小環境を制御しているのか明らかになり、新たな治療標的探索に役立てることができる(創薬への展開)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属しているグループが人手不足に陥り、臨床業務が多忙を極め、研究に割ける時間が当初の予定時間より少なくなり(研究へのエフォートが低下)、また、国内・国際学会への発表や参加がなかなか出来ない状況であった。 次年度はこの状況は改善出来る見込みであり、microRNAの機能解析などに使用する計画である。
|