研究実績の概要 |
膵液中エクソソームの存在を生化学的に証明した後、我々独自の手法を用いて、15個の膵癌細胞特異的microRNAを同定した。その後、リアルタイムPCRによるvalidationを繰り返した結果、エクソソーム中膵癌特異的microRNA-XXXX(以下、Ex-miR-XXXX)およびmicroRNA-YYYY(以下、Ex-miR-YYYY)の同定に成功した。 膵癌患者膵液15例、慢性膵炎患者膵液11例でROC曲線を作成した結果、Ex-miR-XXXXのAUC は0.82(p=0.026)、Ex-miR-YYYYのAUCは0.73(p=0.22)であった。Ex-miR-XXXX単独, Ex-miR-YYYY単独, Ex-miR-XXXX/Ex-miR-YYYY/膵液細胞診(PJC)による感度はそれぞれ80%,73.3%,100%、特異度はそれぞれ81.8%,81.8%,72.7%、正診率はそれぞれ80.8%,76.9%,88.5%であった。以上より、PJCに、この二つの膵癌特異的microRNAを上乗せすることによって、より膵癌診断のバイオマーカーとして有用であることが示された。 また、膵液から得られた本知見を「血清診断」へと昇華させるために、膵液および血清サンプルがペアで揃っている膵癌患者4検体および非膵癌患者5検体の血清を用いて、上記2個のmicroRNAに関して、リアルタイムPCRを行った。その結果、miR-XXXXが膵液から検出された膵癌患者4例中2例の血清エクソソームからmiR-XXXXが検出可能であり、また、非膵癌患者では発現がみられなかったことより、miR-XXXXを基盤とした血清診断への導出の可能性が示唆された。さらに、上記2例に関しては、膵癌根治切除後の血清においてEx-miR-XXXXの発現が低下しており、治療効果モニタリングとしての有用性も示唆された。
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