研究課題/領域番号 |
19K16852
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
中野 倫孝 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 消化管・腫瘍内科医師 (30839478)
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研究期間 (年度) |
2020-03-01 – 2023-03-31
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キーワード | BRAF / 微小環境 / 大腸がん |
研究実績の概要 |
本研究は予後不良であるBRAFV600E変異陽性(BRAF-mt)大腸がんにおいて、免疫チェックポイント阻害薬による治療奏効の見込まれる高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)とそれ以外の集団(マイクロサテライト安定性:MSS)に分類し、公共データベース及び臨床検体を用いてそれらの特徴を解析することにより、新たな治療標的を探索することを目的としている。TCGA・GEOなどのデータベースを用いて、コホート1(BRAF-mt MSI-H:n=111 BRAF-mt MSS:n=80)、コホート2(BRAF-mt MSI-H:n=37 BRAF-mt MSS:n=22)を作成した。クラスタリング解析、パスウェイ解析などの解析手法を用いて、それぞれに特徴的な遺伝子群(MSI-H:細胞障害性T細胞、MSS:Wnt シグナル及びTGF-beta シグナル)を同定した。今後は免疫チェックポイント阻害薬の奏効が現段階では充分に期待できないため、治療標的の同定がより一層望まれるBRAFV600E変異陽性MSS大腸がんの詳細な分類を中心に解析をすすめていく。九州がんセンターで診療されたホルマリン固定検体を中心として、網羅的遺伝子発現、およびSpatialイメージングにより、免疫担当細胞の浸潤、隣接する細胞間のシグナル伝達を詳細に明らかにしていく予定である。 これらの結果から、BRAF変異陽性大腸がんにおいて、免疫チェックポイント阻害薬の効果の期待できる奏効群を抽出し、さらに非奏効群における最適な治療選択候補を探索することができるため、同患者群における個別化医療の推進が期待される。また、得られた結果は、ASCO-GI annual meeting 2019にてポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 本研究は、研究代表者の海外渡航などの事情により研究中断を経て令和2年度より再開している。それに伴い実際のサンプルを用いた解析がやや遅れていたが、網羅的遺伝子発現解析を行い、本年度はマルチプレックス免疫染色などある程度行う方針である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、公共データベースのドライ解析だけでなく、実際の患者サンプルを用いての解析も同時に行なっていく。 24例のBRAF変異陽性大腸がんのサンプルを九州がんセンターを中心に集積し、遺伝子発現解析を行なった。 それにより、各群の詳細な免疫担当細胞の浸潤や、活性化しているシグナル経路を同定することが可能となる。さらに、当院における約50例のBRAF変異大腸がん症例において、マルチプレックス免疫染色を行う。これによ り、臨床情報と紐づいた網羅的なタンパク発現と、隣接する細胞間の詳細な情報が明らかとなり、同疾患群におけるさらなる治療標的の探索を期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
R4年度分に必要な研究費を逆算し、R3年度分の研究費を一部繰り越した。これらを用いて、マルチプレックス免疫染色を行う予定である。
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