本研究では腫瘍微小環境中での腫瘍血管正常化の観点で、メトホルミン(Met)と抗PD-1抗体(αPD-1)併用治療の影響を調べた。4T1 乳癌細胞株をBALB/cマウスに皮内注射し、5~6日後からメトホルミン(5 mg/mL)の自由飲水投与と、抗PD-1抗体の腹腔内投与による治療を開始した。治療開始後3日目に腫瘍を摘出し、組織ブロックおよび切片を作成し、免疫組織染色法による解析を行った。 本年度はIFN-γによる血管正常化の指標の一つとして、血管内皮細胞におけるVE-cadherinの発現を調べた。Met+αPD-1により血管内皮細胞でのVE-cadherinの発現が上昇したが、それは治療時にCD8T細胞の除去を行うことでキャンセルされた。したがって、これまで見出してきたCD8T細胞およびIFN-γ依存的な血管正常化メカニズムに関する知見をさらに得ることができた。また、血管内皮細胞およびその近傍におけるp-STAT1の発現を調べたところ、Met+αPD-1により上昇することが分かった。このことからも、Met+αPD-1による腫瘍血管正常化にはCD8T細胞から分泌されるIFN-γが重要な働きをしていることが考えられる。 本研究を通して、Met+αPD-1併用療法による腫瘍血管の正常化の指標として、血管内皮細胞(CD31+)とそれを覆っている血管平滑筋またはペリサイトのマーカーであるα-smooth muscle actin (αSMA)との重なる領域(CD31+ αSMA+)の増加、蛍光標識された70kDa dextranの腫瘍組織内部の血管からの漏れの減少、2MDa dextranの腫瘍血管内部への蓄積の減少などを観察してきた。これらのMet+αPD-1併用療法による腫瘍血管の正常化は、活性化CD8T細胞によるIFN-γ依存的であることが見出された。
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