研究代表者は、すでに癌組織に関するpublic dataを用いて大腸癌に特異的にメチル化されたシトシンを同定し、本研究に着手した。public dataをhold-out法により4:1でdiscovery setとvalidation setに分割し、discovery setを用いて大腸癌特異的なメチル化パネルを作成した。validation setにおいても、大腸癌の診断精度はROC解析でAUC=0.981と非常に高い精度を示し、その診断能が支持された。 実際の組織データを用いたPost-Bisulfite Adaptor Tagging(PBAT)法によるwhole genome bisulfite sequencing(WGBS)診断能の検証では、大腸癌原発巣の9例の凍結切片全てにおいて、大腸癌特異的メチル化パネルで陽性となった。また、大腸癌転移巣の9例のパラフィン包埋切片においては、6例で大腸癌からの転移であると診断しえた。パネルの基となったメチル化に関するpublic dataはメチル化アレイデータであり、研究代表者の結果からは、異なったmodarityであるシーケンスにもそのパネルが有用である事が示され、かつ凍結切片・パラフィン包埋切片に関わらず有用であることが示された。 さらには、別のコホートで大腸癌・胃癌・乳癌のそれぞれ16例の凍結切片をメチル化アレイにかけて、その診断能を検証したところ、大腸癌の診断精度はROC解析でAUC=0.879と非常に高い精度を示した。これにより、大腸癌の同定のみならず、外科領域で主な癌腫である胃癌・乳癌との鑑別も可能なメチル化パネルであることが示された。
|