研究課題/領域番号 |
19K16872
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村瀬 真 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30836755)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性神経膠腫 / 自殺遺伝子 / iPS細胞 / 神経幹細胞 / CIRSPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
悪性神経膠腫(グリオーマ)は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた集学的治療を行っても、全生存期間の有意な延長は得られていない極めて難治性の脳腫瘍である。脳腫瘍幹細胞(GSC)の存在により、強い浸潤性および治療抵抗性を示す。自殺遺伝子療法は、bystander効果により広範にGSCを死滅させる可能性があるが、申請者はさらに治療効果を高めるため、GSCへ遊走性を示すinduced pluripotent stem cell (iPS細胞)由来の神経幹細胞(NSC)にレンチウイルスベクターで自殺遺伝子(yCD-UPRT)を導入する新規治療法を開発し、ヒトグリオーマモデルマウスに対して著明な治療効果を得た。一方で、臨床応用に向けては、iPS細胞に遺伝子導入することが望ましいが、レンチウイルスベクターでは、位置効果による自殺遺伝子の不活性化が生じ、恒常的な遺伝子発現を維持すること困難であった。この問題を解決するために、本研究ではまずCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、ハウスキーピング遺伝子領域またはセーフ・ハーバー領域にyCD-UPRTを挿入したiPS細胞を作製し、恒常的に安定した遺伝子発現を可能とする挿入部位を探索する。その結果樹立したiPS細胞から分化誘導した治療用NSCの抗腫瘍効果をヒトGSCモデルマウスにおいて評価し、さらに脳切片培養を用いてbystander効果をリアルタイムに撮影することで、移植NSC数等の最適条件の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、レンチウイルスベクターで生じた位置効果による自殺遺伝子の不活性化を克服し、治療用幹細胞の安全性、安定供給を目的として、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、ハウスキーピング遺伝子のGAPDHまたはβ-actin、およびAAVS1セーフ・ハーバー領域に、yCD-UPRT融合自殺遺伝子を挿入したiPS細胞を作製した。相同組み換えの確認は、genomic PCRおよび最終的にはgenomic sequencingによって確認した。その結果、遺伝子の安定発現を実現した領域を同定し、その領域にyCD-UPRTを挿入したiPS細胞をNSCに分化誘導した。(治療用NSC)。その後、in vitroにおけるヒトグリオーマ細胞U87及びヒトグリオーマ幹細胞hG008に対する抗腫瘍効果を評価した。さらに、U87を用いたグリオーマモデルマウスに対して、治療用NSCを移植し、コントロールマウスに比較して著明に生存期間を延長させ、腫瘍完全消失したマウスも得た。
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今後の研究の推進方策 |
びまん性浸潤をきたすより臨床像を反映するヒトグリオーマ幹細胞株hG008を免疫不全マウスの線条体内に定位的に移植したモデルマウスにおいて、昨年度樹立した治療用NSCの抗腫瘍効果を評価する。ルシフェラーゼ活性を指標としたBio-luminescence imaging study(IVIS Systemを使用)により腫瘍の増減を経時的・定量的にモニターする。生存解析、病理組織学的解析を行い、抗腫瘍効果と治療の安全性を評価する。 また、治療用NSCを蛍光タンパクhKO1でラベリングし、脳腫瘍に遊走・集積し、bystander効果を及ぼす様子を我々が樹立した脳切片培養法をライブイメージングし定量的に評価する。以上により、NSCの腫瘍への指向性、及び適切な移植NSC数を詳細に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効果的に物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。 次年度は、自殺遺伝子細胞療法のin vivo効果解析にさらに重点を置くため、動物購入・飼育費等に費用がかかる。本治療計画はヒト細胞を用いるため、動物は免疫不全mouseでなければならず、最低でもBALB/C由来のNude mouseである必要があり、場合によってはNOD/SCID mouseも購入する可能性がある。さらに腫瘍の増大・縮小を経時的にモニターするために、IVISイメージングシステムを頻用する。そのための試薬費などは高額である。また、本研究は、幹細胞培養を持続的に行うため、そのための低接着フラスコ含め特殊な培養液、培養皿が必要となる。以上含め、その他、組織解析の関連試薬を中心に購入予定である。
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