研究実績の概要 |
本研究では、腎癌の中でも特に非淡明細胞型腎細胞癌に焦点を当て、ドライバー遺伝子や治療標的となりうる遺伝子異常の探索を目的としている。さらに、組織形態や免疫染色による蛋白の発現を確認することにより、日常診療で効率よく当該遺伝子異常を伴う腎細胞癌を発見できることを目指している。 初年度は、遺伝子解析を行う症例を選定するための検討を行った。まず、当院の過去約600例の腎細胞癌のデータベースから、組織マイクロアレイを作製し、必要な免疫染色を併用した上で、最新のWHO分類第4版に基づく組織型分類を行った。淡明細胞型、乳頭状、嫌色素細胞/オンコサイト型、分類不能型など12種類の組織型に分類した。過去の転座に関連する組織形態の報告に基づき、MiTファミリー転座型腎細胞癌、粘液管状紡錘細胞癌、乳頭状腎細胞癌、分類不能型などの症例の中に、候補となる症例が含まれている可能性が示唆された。 一方、当初はNanoString社のnCounterシステムを用いて融合遺伝子解析を行う予定であったが、未知の転座パートナーの検出にも対応できるよう、次世代シーケンサー(NGS)による解析を行う方針に変更した。1症例あたりのNGSの解析の費用を考慮すると、今回目的とする独自のカスタムパネルを作成することが効率的と考えられた。そこで、肺癌などでは既に臨床的に効果が確認されている特異的な阻害薬が存在するALK, RET, ROS1融合遺伝子などを含めた約14遺伝子を含むカスタムパネルを作成した。最終的に、予算内で施行できる22症例をNGS解析用に選定した。病理診断の残余検体であるホルマリン固定後のパラフィンブロックから抽出したRNAのクオリティー検査では、核酸量や濃度ともに基準を満たしていた。これらの症例に対し、現在、高速シーケンス解析を施行中である。
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