研究実績の概要 |
本研究では、腎癌の中でも特に非淡明細胞型腎細胞癌に焦点を当て、ドライバー遺伝子や治療標的となりうる遺伝子異常の探索を目的としている。2020年度はArcher社の融合遺伝子解析技術を用いて、22症例に対し次世代シークエンサーによる解析を行った。過去に報告された転座型腎癌の組織形態などを参考に、解析対象症例をMiTファミリー転座型腎細胞癌、粘液管状紡錘細胞癌、乳頭状腎細胞癌、分類不能型腎細胞癌の中から抽出した。検索を行う融合遺伝子は、肺癌などで既に特異的な阻害薬が開発され治療効果が確認されているドライバー遺伝子と腎癌で異常が報告されている遺伝子を含むERBB2, EGRF, EWSR1, MET, NTRK1, ALK, MITF, BRAF, NEG1, RET, TFE3, ROS1, TFEBの13種類を選定し、これらのターゲット遺伝子を含むカスタムパネを作成した。また、RNA-sequenceによる網羅的な遺伝子解析も同時に施行されたため、そこから得られた解析を本学の附属生命医学研究所ゲノム解析部門と共同で行っている。今回検出できた融合遺伝子はALKとTFE3のみであったが、RNA-sequenceの結果からは、今回解析した症例の中には高頻度にみられる遺伝子異常がある可能性が示されている。今後は、形態的評価と遺伝子異常の関連を調べた上で、臨床的意義について検討を行っていく。 一方、今回の腎癌の解析を行う上で、当院で2006年から2017年に切除された腎腫瘍の臨床病理学的データベースを構築しTissue Microarrayの作製やRNA抽出を行っていたが、それらを用いた腎癌の予後や治療反応性などに関わる解析も同時に行い、得られた結果を論文報告中である。
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