研究実績の概要 |
近年様々な癌腫でドライバー遺伝子異常を伴う腫瘍が同定されており、その特異的な阻害薬により高い治療効果が得られている。本研究では、非淡明細胞型腎細胞癌を対象に、既に臨床的に効果が確認されている特異的な阻害薬が存在する融合遺伝子の有無を検索し、臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的とした。腎腫瘍655例の中から候補となりうる症例を22例選定し、Archer Assay Designerでカスタムパネル設計を行い、ALK, EWSR1, ROS1, RET, NTRK1, NRG1, EGFR, BRAF, MET, HER2, TFE3 及び TFEB 遺伝子に関して、標的融合遺伝子と標的遺伝子変異の検索を行った。その結果、既知の融合遺伝子 (TFE3-PRCC, TFE3-SFPQ; 各1例) および未知の転座パートナーを有するALK 融合遺伝子 (1例) が検出されるのみであった。TFE3転座型腎細胞癌2例の組織学的特徴は既報に類似していたが、ALK融合遺伝子を伴う腎細胞癌は既報と異なり予後不良であった。今回検出されたALKの転座パートナーが悪性化に寄与している可能性については研究期間中に解決に至らなかった。 並行して、腎癌の臨床病理学的データベースを用いて、淡明細胞型および非淡明細胞型腎細胞癌の予後やバイオマーカーに関する検討を行い、既存の治療薬(血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬)の治療奏功性に関わる遺伝子発現と組織学的指標の関連を明らかにした。最終年度は淡明細胞型の新規治療ターゲットとなりうるHIF2aと血管網に基づく組織構築、非淡明細胞型の腫瘍関連免疫細胞の状態に焦点を当て、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の病理画像やRNA-sequenceデータを用いて検証を行い、その有用性につき学会発表や論文発表を行った。
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