本申請課題では、グルタミントランスポーターであるASCT2を標的とした、KRAS遺伝子に変異のある癌に対する治療効果について、申請者らが独自に取得した新規抗ASCT2モノクローナル抗体(mAb)を用い検討する。今年度は主に大腸癌について検討した。KRAS遺伝子に変異のあるヒト大腸癌細胞株、KRAS遺伝子正常のヒト大腸癌細胞株ともに、細胞膜上でASCT2が発現していた。しかしながら、xenograftモデルを用いた検討より、KRAS遺伝子に変異のある細胞由来の腫瘍の増殖は、抗ASCT2 mAb投与により増殖が有意に抑制されたものの、KRAS遺伝子正常の細胞由来の腫瘍では対照群と同程度の増殖であった。さらに、KRAS遺伝子変異のある細胞ではグルタミンの細胞内への取り込みが、抗ASCT2 mAb処置により有意に減弱していた。一方、KRAS遺伝子正常の細胞では、取り込みの抑制が認められなかった。以上より、ASCT2がKRAS変異の大腸癌の治療標的として有用である可能性が考えられる。
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