研究課題/領域番号 |
19K16878
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
白濱 仁深 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター ゲノム研究部, 研究員 (20838552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん細胞 / GPX4 / フェロトーシス |
研究実績の概要 |
薬剤の存在下で長期にわたり生存するPersister細胞は、GPX4へ強く依存し、GPX4阻害剤によりフェロトーシスが誘導されやすいことが知られている。本研究は、がん細胞のストレス応答という観点から、そのメカニズム解明に取り組む。 本年度は、まず薬剤存在下におけるGPX4依存性の出現機序を理解するため、Persister細胞のモデルとして確立されているメラノーマ細胞と分子標的薬を用いた検討を行った。その結果、薬剤を処理し続けた細胞が、確かにGPX4依存性を示すことを確認した。一方で興味深いことに、当該細胞は元々GPX4依存性の性質を持っており、細胞密度が高くなるにつれて依存性が失われることが分かった。薬剤を処理した場合は、細胞増殖が抑えられ、当初のGPX4依存性が維持された。 そこで、細胞密度とGPX4依存性の関係を更に検証するため、DNA複製阻害剤を用いて細胞増殖を抑制したところ、低い細胞密度と共にGPX4依存性も保たれる結果となった。また、三次元培養による検討を実施したところ、細胞数が少なくとも、細胞同士が密着した状態ではGPX4に非依存性を示した。この状態に薬剤処理を行ってもGPX4非依存性は変わらなかった。以上より、GPX4依存性を導く因子の一つとして細胞密度が示唆された。更に、様々ながん種に広げて検討したところ、低細胞密度でGPX4に感受性を示す細胞が、メラノーマ細胞に限らず複数のがん腫にまたがって存在することが明らかになった。 次に、この低細胞密度によるGPX4依存性とストレス応答の関わりを調べるため、統合的ストレスに関連するストレッサー・阻害剤とGPX4阻害剤との共処理を行った。その結果、一部の経路に関わるストレッサー・阻害剤において、それぞれGPX4非依存・依存の誘導が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、GPX4依存を導く因子の一つとして、細胞密度を見出すことができた。分子標的薬の処理によって誘導されるGPX4依存性は、薬剤による細胞増殖の抑制を介して誘導されている可能性が考えられる。実際に、DNA複製阻害剤の処理や三次元培養の実施によって、その可能性を確認することができた。また、細胞密度に依存したGPX4依存性に、統合的ストレス応答の経路の一部が関わっていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
細胞密度に依存したGPX4依存性と統合的ストレス応答の関係について、シグナル伝達経路の探索を行う。両者に関連が深い分子が同定できた際は、新たな分子標的による腫瘍抑制効果の確認を行う。
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