研究実績の概要 |
非小細胞がん患者においてEGFR変異は、欧米では5-15%、日本人では50%の割合を占める (Kohno et al, 2015, Takahashi et al, 2016)。EGFR感受性変異を持つ患者では、第一、第二世代 EGFR-TKIが有力な手段とされてきたが、ほぼ全例で耐性の獲得が報告され、50%以上がT790M の変異獲得によるものである(Kobayashi et al, 2005, Pao et al, 2005)。T790Mを標的に開発された第三世代EGFR-TKIオシメルチニブでもC797S,T790M lossといった複数の耐性変異が報告されている (Thress et al, 2017)。他にもEGFR-TKI耐性の出現にはいくつかメカニズムが知られているが、網羅的なメカニズムは未だ明らかにされていない。また、最近の研究からがんの不均一性は、耐性出現にも重要な役割を果たすことが知られてきた。 本研究では、第三世代EGFR-TKI阻害薬であるオシメルチニブを用い、薬剤耐性の過程を「一細胞レベル」で、「経時的に」、「モデル系」及び「臨床データ」を利用して、解析することで薬剤耐性メカニズムの解明を試みている。 令和元年~2年度に、薬剤耐性モデル細胞株を用いた一細胞レベルでのトランスクリプトーム解析を行い、これらの結果から耐性に関与する可能性がある特徴的な遺伝子発現の変化が明らかにされた。さらに、これらの発現遺伝子の変化の臨床における意義の解明のために臨床データの解析にも取り組んだ。 令和2年度は、これまでの研究成果をまとめ、論文の投稿を行った。現在、査読結果をもとに追加の実験に取り組んでいる。追加実験においては、これまでの細胞株を用いた基礎的なデータ、臨床関連のデータに加え、これらの実験から得られた仮説を補足するため、動物実験等も必要に応じて追加する。これらの成果は、投稿済みのデータと合わせ、令和3年度中に完成を目指す。
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