研究実績の概要 |
本研究では、大脳皮質体性感覚野における脳血流と脳神経活動を同時計測を目指し、2色LED( 緑色光[波長525 nm], 赤色光[625 nm])を搭載した小型脳機能計測用CMOSイメージングデバイスの開発を行った。本年度は、昨年度に達成した簡易設置構造(Modular head-mounted cortical imaging device for chronic monitoring of intrinsic signals in mice”, Journal of Biomedical Optics,27(2),026501,2022/02/14)を搭載したCMOSイメージングデバイスを用いて、遺伝子組み換えマウスを使用した脳機能観察実験を実施した。カルシウム蛍光プローブGCaMP6を発現する遺伝子組み換えマウスを使用した脳表血流・蛍光観察実験を行った。デバイスには血流観察用LED(波長535nm)、蛍光励起用LED(波長465nm)と励起光カット用ロングパスフィルタ(500nm Cut-On)が搭載されている。脳刺激に応答する血流変化と蛍光変化を同時に計測する事に成功し、血流と神経活動の関連性評価に有効なデバイスを開発できたと考えている。本研究成果は、"脳表観察用ヘッドマウント蛍光イメージングデバイスの開発", 第96回日本薬理学会年会, 2022/12/1)"、および"脳表血流・蛍光観察用ヘッドマウントCMOSイメージングデバイス", 第83回応用物理学会秋季学術講演会, 2022/9/20で、口頭発表を行った。応用物理学会における発表は、注目講演として選ばれ、応用物理学会から注目講演プレスリリースが行われている(https://www.jsap.or.jp/pressrelease/pr20220914)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の達成目標としていた試作した脳血流・神経活動同時計測可能な小型CMOSイメージングデバイスによる遺伝子組み換えマウスを用いた脳機能計測実験を行う事ができた。さらに、実験結果から脳血流変化と神経活動変化に関連性が見られることを確認した。 実験では、偏頭痛病態とされる皮質拡延性抑制(cortical spreading depression:CSD)を引き起こした際の血流変化と蛍光変化をデバイス機能の評価対象とした。CSDの伝搬に由来する蛍光変化と血流の増加をリアルタイムに観察する事に成功した。今後は、動物行動実験を用いて、血流と神経活動の関連性解明に向けた研究を継続する予定である。 加えて、本年度は開発した技術を細胞観察実験に応用し、"Miniaturized Cell Fluorescent-imaging Device equipped with Multielectrode Array", Sensors and Materials, vol.34, no.4, pp.1587-1599, 2022/4/26に学術論文発表を行った。この実験では励起光カットフィルタを搭載したCMOSイメージセンサ上に、多電極アレイ構造を半導体実装技術により形成した光学素子を搭載する事で、蛍光イメージングと電気生理計測の同時計測を目指したデバイスを開発した。
|