研究課題/領域番号 |
19K16886
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中井 信裕 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (00808967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 社会性行動 / ネットワークダイナミクス |
研究実績の概要 |
動物の社会性行動では視覚、聴覚、嗅覚などを含む複数の感覚モダリティが生じ、大脳皮質で統合・処理された感覚情報を基にして特定の行動が表出されると考えられている。しかし、複雑に絡み合った感覚モダリティの存在下では大脳皮質の神経活動様式から行動を読み解くことは難しい。そのため本研究では、バーチャルリアリティ(VR)システムを用い、現実世界では区別することが困難な社会性刺激を選択的に提示し、行動中マウスに対する感覚モダリティを操作することで、社会性行動時の大脳皮質機能ネットワークの情報処理過程を明らかにする。 これまでのVRシステムでは、一個体からなる被験マウスに対し、主体的な視点をVRで提示し、その環境下における行動様式が解析されていた。しかし、社会性行動は他者との相互作用において生じるものであり、複数個体を用いて解析できるインタラクティブ環境がより理想的とされる。本研究では、同仕様のVRシステムを二台使用し、ソフトウェア上でリンクさせることにより、二個体の被験マウスが同一のバーチャル空間を自由探索することのできるマルチユーザー型VRシステムを構築した。このインタラクティブ環境によって、能動的および受動的な社会性相互作用時の神経活動をVRシステム上で捉えることができる。このときの大脳皮質活動を二個体から同時記録することで、より現実世界に近い感覚モダリティによる社会性行動の大脳皮質ネットワーク動態を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、本研究で使用するバーチャルリアリティ(VR)システムをマルチユーザー型に拡張し、二個体のマウスが同一の仮想空間を探索できるインタラクティブ環境を構築した。マルチユーザー型VRシステムを用いて、被験マウス二個体がアバターを視覚情報によって操作し、互いに追跡し合う行動を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
マルチユーザー型VRシステムを構築できたので、今後感覚情報の対象を視覚以外にも広げ、複数の感覚刺激を入力し、社会性行動に伴うマルチモダリティをVRで再現する。また、マウス二個体同時に経頭蓋カルシウムイメージング法による大脳皮質活動記録を行う。マルチユーザー型VRシステム上の行動と大脳皮質活動を解析することで、社会性行動時における大脳皮質機能ネットワーク動態の理解を目指す。
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