動物の社会性行動では視覚、聴覚、嗅覚などを含む複数の感覚モダリティが生じ、大脳皮質で統合・処理された感覚情報を基にして特定の行動が表出されると考えられている。しかし、複雑に絡み合った感覚モダリティの存在下では大脳皮質の神経活動様式から行動を読み解くことは難しい。そのため本研究では、バーチャルリアリティシステムを用い、現実世界では区別することが困難な社会性刺激を選択的に提示し、行動中マウスに対する感覚モダリティを操作することで、社会性行動時の大脳皮質機能ネットワークの情報処理過程を明らかにする。 インタラクティブ型ソーシャルVRシステムを用いて、5匹のマウスから視覚、嗅覚、触覚の多感覚な社会刺激条件下、また、個別の感覚刺激条件下の社会性行動と大脳皮質活動を測定した。感覚刺激の組み合わせ条件によって大脳皮質活動がどのように変化するかを調べた。新たに超音波スピーカーをVRシステムに組み入れ、単調音に対する聴覚野応答を記録した。さらに録音したマウスの鳴声をスピーカーから流すことで、社会性聴覚刺激に関わる皮質機能ネットワークを調べた。引き続き実験数を増やしていき、統計学的解析を行ったうえで、学会発表と論文投稿を行う予定である。 VRシステムを用いて自閉症モデルマウスの行動および大脳皮質機能ネットワークを解析した。野生型マウスとの比較から自閉症特有の大脳皮質機能ネットワークパターンを同定した成果は学術論文として国際科学雑誌に掲載された。
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