腹側線条体は報酬選択の意思決定に関与している可能性が示唆されているが、報酬選択場面において腹側線条体の神経活動が直接的に意思決定シグナルの調節に関わっているのか、フィードバック信号のような形で間接的に関わっているのかは不明であり、これらを明らかにすることは報酬系回路における意思決定メカニズムを理解するうえで欠かすことが出来ない。 本研究では、サルの腹側線条体が報酬選択における意思決定シグナルの調節をどのように担っているのかを明らかにすることを目的としており、これを達するために報酬価値に基づく意思決定課題を遂行中のサル腹側線条体からの単一神経活動記録実験による神経活動の解析と電気刺激実験による選択行動の解析の2つの実験を実施した。 2021年度は前年度までに実施し判明してきた解析結果を踏まえて、より踏み込んだデータ解析を進めることができた。具体的には、報酬価値に基づく意思決定課題を遂行中の2頭のサル腹側線条体から記録した神経活動を解析した結果、報酬価値をコードするニューロンだけではなく、選択の有無をコードするニューロンや選択時のみに報酬価値をコードするニューロンなどを前年度までの研究で明らかにしたが、さらにこれらのデータのシグナルダイナミクスに着目し解析を進めたところ、腹側線条体ではまず報酬価値のシグナルが現れており、その直後には選択時にのみ報酬価値を表現するシグナル、これらに遅れて選択の有無のみを表現するシグナルが出現することが明らかとなった。
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