研究課題/領域番号 |
19K16899
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 のぞみ 奈良県立医科大学, 医学部, 研究助教 (90802819)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウスモデル / 集団飼育 / 社会性 / 社会行動 / 神経精神疾患 / 行動神経科学 / 個体レベル |
研究実績の概要 |
精神疾患は生涯有病率が高く、社会的損失の大きな疾患の一つである。これまでに多くの精神疾患モデル動物を用いて分子レベルから個体レベルまで様々な階層で、多岐にわたる技術による研究が展開されてきた。しかしながら、モデルマウスを用いた個体レベルの行動解析は新奇環境において数分程度で行われる短期的な試験が主であり、社会的な集団生活における行動、すなわちモデルマウスが普段どのような行動を示すのかについてはほとんど検証されていない。本研究では、申請者が独自に開発した集団飼育下行動解析システムMAPSをさらに進化させ、より詳細な行動解析が可能なシステムへと改良する。まず、個体識別のためIDの認識方法をパターン識別から拡張現実(AR)へと変更することでIDの認識速度と精度を向上させた。その結果、録画の時間解像度を1fpsから10-40fpsに向上させ、アプローチ行動などをより正確に検出できるようになった。幼少期ストレスモデルを用いて集団飼育環境における行動への影響を検討したところ、慣れた環境において他のケージメイトの個体間距離が対象マウスに比べ短くなるなど、特徴的な社会性行動を示すことが明らかになった(投稿準備中)。現在はシステムをさらに改良し、マウスの鼻先や尾の付け根などボディパーツを認識できるようにし、研究者が目視の行動解析で行うような詳細な行動分類が可能になるよう改良を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
システムの改良にあたって、安定した動作環境の構築に想定以上の時間がかかったため。 (Windows 10のバージョンアップに伴い、これまで構築してきたシステムが安定して動作できなくなってしまったため、最新版のwindows 10にあわせたシステムに構築しなおしたため。)
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今後の研究の推進方策 |
マウスのボディパーツを認識できる機能を実装した新システムを安定的に動作させる。システムの確立と並行して、集団飼育下における行動異常の神経基盤を探るため、回路特異的に神経活動を制御可能なDREADDを導入する。現在は、DREADDに必要な脳定位固定装置を用いたマイクロインジェクションの練習を始めている。マイクロインジェクションを習得後はDREADDによる回路特異的な神経細胞の活性化もしくは抑制化ができているかを免疫組織化学により確認する。既に集団飼育下での行動異常が確認されている自閉症モデルのBTBRマウスは脳梁が欠失していることが報告されている。DREADDにより対側に投射する皮質間投射を抑制することでBTBRマウスの解剖学的特徴を模倣し、集団飼育下での行動異常と脳梁の機能の関係を探る。
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