研究課題
本研究は、野生型マウスとのペア飼育をヒトにおける自閉スペクトラム症(自閉症)の療育に見立て、結節性硬化症(TSC)モデルマウスの自閉症様行動に対するペア飼育の効果を検討した。またそのメカニズムとして、遺伝子の後天的修飾であるDNAメチル化を解析することで、自閉症の根本治療を実現するための基盤情報を得ることを目的とした。マウスを3週齢から次の3パターンで飼育した。パターン1: 野生型-野生型(ww-w)、 パターン2: 野生型-Tsc1+/- (wh-w、wh-h)、 パターン3: Tsc1+/--Tsc1+/- (hh-h)。初年度から2021年度までは主に行動解析に関してデータを解析した。具体的には、ww-w(野生型同士で飼育した野生型マウス)に対してhh-h(Tsc1+/-同士で飼育したTsc1+/-マウス)は社会性行動時間の減少を示したが、wh-h(野生型と飼育したTsc1+/-マウス)はhh-hに対して有意に社会性行動時間が増加し、野生型とペア飼育したTsc1+/-は社会性行動が改善することを見出した。最終の2022年度においては、メチル化解析を主に行った。メチル化パターンを算出したところgenotypeやペア飼育によってメチル化を受けるパターンが異なる可能性が示唆された。さらに、hh-h/ww-wとwh-h/hh-hにおいて共通し、なおかつメチル化状態が逆方向を示す遺伝子を抽出したところ、発達やタンパク質結合に関与することが見出された。これらのことから本研究において、自閉症の社会性行動障害の改善にDNAメチル化が寄与することが示唆された。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
J Reprod Immunol.
巻: 154 ページ: 103752
10.1016/j.jri.2022.103752.
Neuropsychopharmacol Rep.
巻: 42 ページ: 343
10.1002/npr2.12258.
https://www.igakuken.or.jp/abuse/works_molecpsy/works2022.html#original