研究課題
先行実験で毛細血管を構成する周細胞の一部に神経分化能を持つ幹細胞(CapSCs)、さらに同細胞のシュワン細胞分化能を制御する因子(Ninjuri n1 (Ninj1))を見 出した。このことから、「CapSCsは、Ninj1を介して血管周囲でシュワン細胞に分化し、神経軸索再生を促す」という仮説をたてた。1.NG2陽性細胞特異的蛍光発光マウスの神経障害モデルなどを用いた検証により、神経傷害により増殖するNG2陽性細胞(周細胞)の中でも特にCapSCsが増殖するこ と、また同細胞でのNinj1発現が亢進することを示した。2.Tamoxifen 誘導によるNG2 陽性細胞特異的 Ninj1 knockout (KO)マウスを用いた検証により、同マウスにおいて障害坐骨神経の髄鞘化が抑制されることを示し た。3.培養シュワン細胞ではNinj1発現抑制が髄鞘化マーカーであるMBPの発現を低下させることを示した。また、培養CapSCsにおいてNinj1発現抑制がシュワン細胞 への分化能を低下させることを示した。 上記より、末梢神経障害時に増加するNG2陽性細胞に発現するNinj1が末梢神経再生に重要な役割を果たすことが示唆された。4. さらに障害大血管や障害骨格筋、皮膚創傷治癒など様々な病態モデルにおいてCapSCおよびNinj1の関与を検討をすすめている。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度までに、本研究の仮説の重要な点は、坐骨神経障害モデルを用いて証明することができた。本研究で明らかにしたい末梢神経再生と毛細血管幹細胞の重要性について、普遍的な組織リモデリングでの重要性を確認するために、障害大血管や障害骨格筋、皮膚創傷治癒など様々な病態モデルにおいて検討し、微小血管形成と末梢神経再生の重要性を示唆される基礎データが出ており、成果の一部は全国学会の発表および論文(Stem Cell Res 2020)として報告している。
昨年度までの研究知見から、組織リモデリング過程での末梢神経再生において、NG2陽性細胞のNinj1遺伝子抑制のタイミングの重要性を認識したので、①末梢神経障害および骨格筋障害後にNG2陽性細胞が増加した時点で、Tamoxifen処理によりNinj1遺伝子発現を抑制させた場合の組織再生の効果を評価する。
計画以上に研究が進み、かつ、さらに確認すべき課題が生まれたので、申請研究の最終年度で、これらの目的実験に予算を使用していく。主に組織障害誘導用の試薬および免疫染色用試薬の購入に充てる。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 産業財産権 (1件)
Stem Cell Research
巻: 47 ページ: 101914~101914
10.1016/j.scr.2020.101914