研究実績の概要 |
タウオパチーでは,神経細胞およびグリア細胞内に異常タウ蓄積を認め,これらタウ病変の進展により症状を来すとされる.従来,このタウ病変の進展-異常タウ蛋白の伝播機構は神経細胞で主に解析が進んでいたが,近年ではグリア細胞を介した機序や,より直接的なグリア細胞の関与が示唆され始めている.グリア細胞の中でも特にアストロサイトは,そのタウ蓄積像が疾患毎 (進行性核上性麻痺: PSP, 大脳皮質基底核変性症: CBD, Globular glial tauopathy: GGTなど) に異なる形態を示し,各タウオパチー固有の性格を反映する特徴を持つ.加えて,従来は加齢性変化とされていたARTAG: aging-related tau astrogliopathyは,近年の解析でタウオパチーに高率に合併すること,ARTAG由来の異常タウ蛋白が伝播能を示したことから,病的変化として注目されていた.そこで,タウオパチーにおけるタウ陽性アストロサイト及びARTAGに着目して,病的タウ蛋白の伝播機構及び病態解明に迫ることを計画した. こうした中で,ARTAGの蓄積タウアイソフォームと同じ,4リピートタウが蓄積するGGTにおいて,タウ蓄積下でのアストロサイトの機能変化の一部を明らかにした.また3リピートタウが蓄積するピック病における,アストロサイト内へのタウ蓄積病態について学会報告した.加えてGGTについては,共同研究により,タウ蛋白の翻訳後修飾に関して,他のタウオパチーとの異同について報告がなされた. 着目したARTAGに関しては,実験上は伝播能を示す一方,実際のヒト脳内では限局的な分布に留まることから,他のタウオパチー(PSPなど)のタウ陽性アストロサイトとの比較検証を計画し,組織学的解析に加え,生化学・分子生物学的手法-発現RNAの比較解析などによる両者の違いについて検証を進めている.
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