研究課題/領域番号 |
19K16912
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
中野 将希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任助教 (00823890)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / Amyloid-β / 老化 / 液性因子 / 並体結合 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の最大の危険因子は加齢 (=老化)とされているが、個体老化による何が脳内アミロイドβタンパク質 (Aβ)蓄積、ひいてはアルツハイマー病に寄与するのかという問いは明らかとなっていない。本研究では、脳内Aβ蓄積と個体老化を関連づけることが可能なマウス並体結合 (parabiosis)を用いて、脳内Aβ蓄積を促進ないし抑制する全身性因子を探索することを目的としている。 初年度は、① Aβ蓄積前AppNL-Fマウスと若齢野生型 (WT)マウスとのparabiosis、またはAβ蓄積前AppNL-Fマウスと老齢 WTマウスとのparabiosisを実施中である。これらのparabiosisと並行して、② Aβ蓄積前AppNL-G-Fマウスと若齢WTマウスのparabiosis、またはAβ蓄積前2ヶ月齢AppNL-G-Fマウスと老齢WTマウスとのparabiosisを、これに加えて、③ Aβ蓄積途中AppNL-G-Fマウスと若齢WTマウスのparabiosis、またはAβ蓄積途中AppNL-G-Fマウスと老齢WTマウスとのparabiosisを実施した。AppNL-G-Fマウスを用いたparabiosis実験で、APPノックイン (KI)マウス脳においてAβ沈着を蛍光免疫組織染色法とELISAにて評価すると、parabiosisにより脳内Aβ蓄積への影響 (変化)が確認できた。④ さらには生化学的手法にて老化マーカーをmRNAレベルで評価を行った。他にもAβ分解にミトコンドリアストレス応答などの関与も報告されているため、ミトコンドリアストレス応答 (UPRmt)、マイトファジー、呼吸鎖の関連分子に対してAppNL-Fマウス脳mRNAレベルを調べたが、関与していないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はAPPノックイン (KI)マウスと若齢または老齢野生型 (WT)マウスとの並体結合 (parabiosis)にて脳内Aβを制御する全身性因子の存在の有無を確かめ、Aβ蓄積を制御すると報告されている既存の分子の本研究への関与につい着手し始めるところまでを予定していたが、ほぼその予定通りに進捗している。本課題において最も重要である脳内Aβを制御する因子の存在が確認できたため順調である。parabiosisしたAPP-KIマウス脳の脳内Aβ蓄積への影響にparabiosis相手マウスからの細胞性因子の関与を確認するために、GFP-Tgマウスとのparabiosisも実施し、APP-KIマウス脳にてAβとGFPを蛍光免疫組織染色法にて評価した。結果、APP-KIマウス脳で見られているparabiosisによるAβ蓄積への影響に結合相手マウスからの細胞性因子の直接的な関与はないことまでわかった。一方、AppNL-Fマウスを用いたparabiosisは3ヶ月間を予定していたが、AppNL-Fマウスは12ヶ月齢から24ヶ月齢にかけて緩やかに脳内Aβが蓄積するモデルマウスであるため、6ヶ月間のparabiosisの方がAβを評価するのに適していると判断した。そのため、予定していたよりは時間を要する実験系に変更したが、研究自体の進捗への大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
Aβ蓄積前AppNL-G-Fマウスを使用したparabiosisの結果から、予想していた様にAβ蓄積を制御する加齢性因子の存在が示唆された。一方、予想外に、Aβ蓄積を制御する加齢性因子以外の因子の存在も示唆される結果が得られた。網羅的解析による候補因子の探索に取り掛かる。現在、AppNL-Fマウスを用いた並体結合も並行して実施中である。また、計画通り進めながらも異なるメカニズムからのアプローチをも試みている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた計画よりも高額な試薬の使用量が若干少なく、次年度以降の解析外注費に多く充てる予定である。
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