研究課題
アルツハイマー病(AD)の基本病態である脳内アミロイドβ(Aβ)蓄積の一次的原因ないし促進/抑制因子を、とくに老化関連液性因子の視点から探索し、発症前診断や先制治療の開発に貢献することを目的とした。我々は遺伝子の過剰発現によらず脳Aβ沈着をきたすアルツハイマー病モデルマウス (APPノックインマウス, APP-KIマウス)を用い、老若個体ペアの全身循環系を共有させる並体結合から、脳内Aβ蓄積を制御する加齢依存的全身循環因子を探索すること試みた。(1) 脳内Aβを制御する液性因子の存在の有無:脳内Aβ蓄積を呈す月齢のAPP-KIマウスを若齢、同月齢、老齢の各野生型(WT)マウスまたはGFP-Tgマウスと3ヶ月間、さらには6ヶ月間並体結合し、免疫染色で脳内Aβ蓄積を定量評価した。その結果、Aβ蓄積の程度は((a): 若齢マウスと結合したAPP-KIマウス)<((b): 同月齢マウスと結合したAPP-KIマウス)<((c):老齢マウスと結合したAPP-KIマウス)と加齢と相関することがわかった。この結果は循環因子に脳内Aβを制御する加齢依存的因子が存在することが示唆された。(2) マウス脳におけるRNA-seq解析:並体結合したAPP-KIマウス脳でRNA-seqによる網羅解析を実施し、脳内Aβ蓄積と正 ((a)<(b)<(c))または負 ((a)>(b)>(c))の相関を示す該当分子をピックアップし、さらにreal-time PCR法にて追加確認することで、10分子まで絞り込むことができた。この中にAβ蓄積を制御する加齢依存的な分子が存在する可能性が高く、加齢依存的循環因子の同定を進め、培養細胞での強制発現及びknockdownを用いた実験系も含めて今後も機能評価を継続している。
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Human Molecular Genetics
巻: 31 ページ: 122-132
10.1093/hmg/ddab226