研究課題/領域番号 |
19K16914
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生野 真嗣 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (30808960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / アルファシヌクレイン / 神経細胞死 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
本研究は生体内でのアルファシヌクレイン(α-syn)とグルコセレブロシダーゼ(GCase)の関係に注目し、特にGCaseに関連する脂質成分を中心に解析を行うものである。α-synの蓄積とドパミン神経細胞死を来す2種類の異なるパーキンソン病モデルマウス(①GCaseをコードするGBA遺伝子のヘテロ変異マウスとヒトα-synトランスジェニックマウスの交配マウス、②複数のリスク多型を導入した変異型ヒトα-synトランスジェニックマウス)において共通する要素を見出すことで、ドパミン細胞死の原因を解明することを目的とする。研究第2年度である2020年度は、初年度に得られた脂質解析結果を踏まえ、原因となる酵素の発現量だけでなく活性についても検証しα-synとの関係性を検討した。また、GlcCerやGlcSphをα-syn発現細胞に投与し、α-synオリゴマー形成、Fibril形成に関する効果を検証した。さらに①GCaseをコードするGBA遺伝子のヘテロ変異マウスとヒトα-synトランスジェニックマウスの交配マウスに関して代謝産物解析及び遺伝子発現解析を行った。代謝産物解析では短鎖アシルカルニチンやピリミジンヌクレオチドの変化を認め、ミトコンドリア障害との関連について考察し学会発表などを行った(論文投稿準備中)。遺伝子発現解析に関しては結果に基づいたタンパクレベルでの変化について検証を行っている。これらの結果を踏まえ、2021年度に②複数のリスク多型を導入した変異型ヒトα-synトランスジェニックマウスで解析を行い、比較検証の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂質解析・関連酵素に関しては予定通り進捗している。脂質投与による細胞実験では、単純なα-syn発現量や細胞の生存率よりもオリゴマーを含めたコンフォメーション変化や脂質の相乗効果に着目する必要が判明したため、追加実験を要している。代謝産物解析に関しては過去の報告や解析業者との検討により、条件を均一化した良質なサンプルの確保が結果に大きく影響することが判明したため、サンプル取得方法及び取得計画の再調整を行った。その結果約1年の遅れが生じている。さらに新型コロナウィルスに関連した研究中止期間の影響もあり、本研究全体として1年の研究期間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
GlcCerやGlcSphといった脂質単体の影響だけでなく、それ以外の脂質や相乗効果に関しても細胞実験での評価を行う。α-syn発現量や細胞死のみにとらわれず、α-synのコンフォメーション変化への影響も検討する。2021年度に行う②複数のリスク多型を導入した変異型ヒトα-synトランスジェニックマウスにおける代謝産物解析を2020年度に行った結果と比較検討して共通する特徴を探ると共に、遺伝子発現解析の結果とも照らし合わせる。以上の研究結果を統合し、α-syn蓄積とGBA活性との関連性、これらの異常からドパミン神経細胞死に至るキー分子、パスウェイを導く。
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次年度使用額が生じた理由 |
代謝産物解析に関して過去の報告や解析業者との検討により、条件を均一化した良質なサンプルの確保が結果に大きく影響することが判明した。それに伴いサンプル取得方法及び取得計画の再調整を行った結果、サンプル確保に遅延が生じた。特に新型コロナウィルスに関連した研究中止期間、動物実験施設への立ち入り禁止期間などの関係で②複数のリスク多型を導入した変異型ヒトα-synトランスジェニックマウスにおけるサンプル確保が遅れたため、このモデルの解析を次年度に行うこととなり次年度使用額が生じた。2021年3月末時点で必要なサンプルの準備は完了しており、2021年度に解析の完了が可能であるため、研究計画全体としての支出額には変更は生じない予定である。
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