研究実績の概要 |
近年の研究により、レビー小体は中枢神経系だけでなく、パーキンソン病(PD)の前駆期にも身体の様々な部位で発見されることが分かってきている。このことから、PD は今や早期でも全身性の疾患と考えられており、疾患の発症予防・進行予防のためには本格的な神経変性が起こっていない前駆期における病態生理の解明が重要である。前駆期の病態をヒトで研究することは困難であり、ヒトの疾患を忠実に反映した動物モデルは、疾患の前駆期を評価するための貴重なツールとなる。 本研究は生体内でのアルファシヌクレイン(α-syn)とグルコセレブロシダーゼ(GCase)の関係に注目し解析を行うものである。α-synの蓄積とドパミン神経細胞死を来す2種類の異なるPDモデルマウス(①GCaseをコードするGBA遺伝子のヘテロ変異マウスとヒトα-synトランスジェニックマウスの交配マウス、②複数のリスク多型を導入した変異型ヒトα-synトランスジェニックマウス)の2種類のマウスモデルを中心にドパミン細胞死の原因を解明することを目指した。 研究最終年度である2020年度は、初年度~2年度に得られた脂質解析結果等を踏まえ、モデルマウスの代謝産物解析で得られた短鎖アシルカルニチンやピリミジンヌクレオチドの変化について考察を深めた。ミトコンドリア障害との関連について検討し、論文投稿を行った(neuroscience letters, 2021)。これらの結果により、パーキンソン病ではその前駆期から全身性のミトコンドリア機能障害が存在し、ドパミン神経細胞死を含めたPDの病態に寄与している可能性が示唆された。
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