脳血管内皮細胞をターゲットとする新規自己抗体の,視神経脊髄炎における分子マーカーとしての意義を明らかにするため,本年度はELISA法による髄液中の新規自己抗体濃度と疾患重症度の関連性を検討した.前年度までに,発症・再発イベントおよび血液脳関門破綻の程度と自己抗体の抗体価との関連性が得られたが,今回の検討により,発症・再発時の重症度と自己抗体価が関連する傾向がみられた. 脳血管内皮細胞をターゲットとする新規自己抗体による血液脳関門の破綻機序をさらに検討するため,ヒト血液脳関門モデルを用いて実験的検討を行った.視神経脊髄炎のプール血清から精製した免疫グロブリンGと,同定された新規ターゲット分子の全長組み換え蛋白を用いて吸収した免疫グロブリンGを,それぞれヒト脳血管内皮細胞に作用させ,血液脳関門のバリア機能維持に重要なタイトジャンクション分子であるclaudin-5の発現をウエスタンブロット法および免疫染色法で比較した.患者血清から精製した免疫グロブリンGに比べ,ターゲット分子の組み換え蛋白質で吸収後の免疫グロブリンGは,脳血管内皮細胞のclaudin-5の蛋白量を有意に増加させた. 一連の検討で,あるストレス蛋白質に対する抗体は,血液脳関門の破綻に直接関与する新たな自己抗体であり,その抗体価は,発症,再発時に高値で,重症度に関連性があり,視神経脊髄炎の病勢をモニターできる分子マーカーとなる可能性が示唆された.
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