研究課題/領域番号 |
19K16920
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
高月 英恵 宮崎大学, 医学部, 助教 (80773978)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | プリオン病 |
研究実績の概要 |
クロイツフェルト・ヤコブ病に代表されるプリオン病は発症すると確実に死に至る感染性の神経変性疾患である。現在、治療薬および治療法は未だ無く、これまでに開発された治療薬は臨床試験まで進んだものの治療効果が十分得られず、副作用が問題となった。本研究はプリオンタンパク質(PrP)に対する結合部位の異なる化合物を多剤併用することで相乗効果をねらい、副作用の少ないコンビネーションセラピーの確立を目的とする。 異常プリオンタンパク質は構造変換(βシート構造の増加)によってプロテイナーゼKで消化されにくくなるため、でこれまでにin vitroにおける抗プリオン薬のスクリーニングはプロテイナーゼK耐性PrPの検出によって行われてきた。しかし、プロテイナーゼKで消化されてしまう、PrP 10~20分子程度のオリゴマーは感染性が高いことが報告されており、プロテイナーゼK耐性PrPの検出だけでは感染性の指標として十分とは言い難い。本研究ではプリオンタンパク質に結合する化合物をドッキング計算によって見出し、我々が開発した高感度検出法を用いることで、これまでのスクリーニングの指標とされてきたプロテイナーゼK耐性PrPだけでなくプリオン活性についても評価をおこない、有効な治療薬を探索する。また、試験管内プリオン増幅法(PMCA法)を用いて薬剤の異常プリオン増幅抑制効果を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度においては、ドッキングシミュレーションにより化合物とプリオンタンパク質の結合部位および結合強度を計算した。プリオン持続感染細胞における化合物のプリオン抑制効果の評価では、結合強度と抑制効果は相関しない傾向にあった。 また、プリオン持続感染細胞における化合物のプリオン抑制効果を細胞中のプリオン活性にて評価を試みたところ、薬剤とプリオン株の組み合わせによってはプロテイナーゼK耐性PrPが消失した後もプリオン活性が維持されていることが明らかになった。そして薬剤を培地から除去するとプリオン活性およびプロテイナーゼK耐性PrPの回復が観察された。プリオン株によって薬剤の抗プリオン効果に違いがあることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
プリオン病はウイルスと同様に株が存在することが特異な点であり、症状・徴候、臨床経過および生化学的特性が異なる。プリオン株によって化合物の抗プリオン効果が異なることが示され、ヒトプリオン病に有効な治療薬の探索にはヒトプリオン株を用いたスクリーニング系が必須である。現在、試験管内ヒトプリオン増幅法(PMCA法)の開発に着手している。試験管内ヒトプリオン増幅法を確立し次第、抗プリオン薬のスクリーニングに応用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していた動物試験を次年度に持越ししたため次年度使用額が生じた。
|