研究課題
海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチドHCNPは、中隔核培養組織でアセチルコリンACh産生を促進する。HCNP過剰発現マウスはアミロイドオリゴマーによる海馬の神経活動抑制に抵抗性を示す。本研究は、認知予備能CRのメカニズムをACh/コリン作動性神経の観点から明らかにすることを目的とした。すなわち、①個体内でもAChを介して海馬神経活動を制御するか、②海馬へのコリン作動性神経起始核の内側中隔核MSの保護作用を有するか、ということである。その方法として、HCNPコンディショナルノックアウトマウス:KOを作成し、行動学的解析・主にマイクロダイアリシス法によるACh量的解析・中隔核コリン作動性神経の組織学的解析をcontrol群と比較して行った。行動学的解析では56週齢で、認知・不安・うつ様行動で両群間に有意差を認めなかった。海馬ACh量的解析では60週齢ではKO群で有意に低下しており、さらにウェスタンブロット法で量的解析を進め、vesicular acetylcholine transporter: VAchTもKO群で低下していることを示した。MSのcholine-acetyltransferase: ChATの免疫組織学的解析では両群間に差を認めなかった(学会発表・論文発表済)。またKO群では海馬コリン作動性神経の活動性が減少していること、海馬CA1でのChAT陽性神経終末も減少していることを本教室より2019年に報告した。上記の結果から、HCNPによって、AChを介して海馬神経活動が制御される可能性を示したが、MSのChAT陽性細胞の保護作用を有することは示せなかった。予定した実験は計画通り遂行した。今回の結果より、CRメカニズムの一端を、HCNPによるコリン作動性神経活動の制御が関与する可能性を示せたものと考えられた。今後、CRのさらなるメカニズム解明が期待される。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 542 ページ: 80-86
10.1016/j.bbrc.2021.01.010.
Sci Rep
巻: 11(1) ページ: E22072
10.1038/s41598-021-01667-8