研究課題/領域番号 |
19K16923
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 ちひろ 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00516065)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | multiple sclerosis / clinical diversity / immunological diversity / biomarker / disease modifying drugs |
研究実績の概要 |
多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は、中枢神経系の自己免疫性炎症性脱髄疾患で、本邦でも患者数が増加傾向にある神経難病である。我々が現行の診断基準から「MS」と診断可能な症例においても、その臨床像は極めて多様であり、また標準的MS治療薬である疾患修飾薬に対する反応性も一様ではない。こうした「MSの多様性」の背景には、患者ごとの、あるいは同じ患者の中でも病期によって免疫病態の多様性が存在すると考えられるが、現状では、その時々の個々のMS患者の免疫病態の相違に着目した治療薬選択は実現できていない。本研究では、「MS」と診断された患者群において、治療薬への反応性をはじめとする種々の臨床的特徴と、各種末梢血単核球の表現型や機能的特徴などの免疫病態とを照らし合わせて解析することで、MSの臨床的多様性の背景にある免疫病態の多様性を明らかにし、その多様性に応じた適切な治療薬選択のためのバイオマーカーの確立を目指す。 今年度は、MSの種々の疾患修飾薬に関して、その有効例と無効例の臨床的特徴について解析を行った。無効例については、疾患修飾薬による治療から、ステロイドおよび免疫抑制剤での治療に変更後、病勢が安定したものを対象とした。これら疾患修飾薬無効例において、有効例と有意に異なる特徴は、MRI検査においてはMSに特徴的な造影所見を認めないこと、血清学的には臨床的意義の乏しい自己抗体が陽性であることの2点であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、MSの免疫学的多様性の解析に先立ち、MSの臨床的多様性において、どの臨床的特徴が治療反応性に影響を与えているのかを解析した。MSにおける着目すべき臨床的特徴としては、患者背景、MRI所見、血清学的所見、髄液検査所見など複数の因子があり、これらの因子の中から、単独で、あるいはほかの因子と関連して、治療反応性や疾患活動性、予後に影響を与える因子を約100例のMS症例から解析した。 本年度は臨床的多様性の解析を中心に進めたため、背景となる免疫病態、末梢血単核球解析は十分に進められておらず、次年度以降に抽出した臨床的特徴と関連のある免疫学的特徴の解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、患者症例数を増やしながら、MS症例の臨床的特徴による分類を継続的にお行っていく。加えて、分類された各群の患者末梢血単核球をフローサイトメトリーを用いて解析し、各種の免疫細胞頻度を明らかにし、各群において増減のある免疫細胞においてはケモカインなどの細胞表面分子や細胞機能に関わる細胞内分子の発現を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は対象症例の臨床的特徴に関する解析を中心に行ったため、当初予定していた末梢血単核球のフローサイトメトリー解析に用いる試薬の購入費用は予定金額を下回った。 次年度以降には、本年度凍結保存された末梢血単核球を用いて、フローサイトメトリーを中心としたリンパ球解析を進めていくため、本年度購入しなかった複数の試薬の購入を予定しており、次年度分としてすでに請求した助成金と合わせて必要な試薬の購入費に使用する予定である。
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