研究課題/領域番号 |
19K16924
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
森井 芙貴子 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 助教 (60806842)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シャルコー・マリー・トゥース病 / ショウジョウバエ / 疾患モデル / CMT2A / キネシン / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
我々はミトコンドリア軸索輸送に関与する分子の候補としてklp68dを得た。その分子的機能についてさらに検討するため、今度は上記の神経変性モデルの3系統とklp68d強制発現系を交配し子世代の運動機能・神経変性の表現型を確認したが、コントロールと差がなかった。そのためklp68dはノックダウンにおいてMarf、TBPH、cazと遺伝的相互作用を示すと考えられた。 また網羅的遺伝子発現解析において、ダブルノックダウンでは、シングルノックダウン(Marfのみ、tbph我々はミトコンドリア軸索輸送に関与する分子の解析を通して、神経変性疾患の新規治療標的の開発を目的としている。 我々は神経変性モデルとしてヒトMFN2に相当するMarfノックアウトショウジョウバエ、ヒトTDPー43に相当するTBPHノックダウンショウジョウバエ、ヒトFUSに相当するcazノックダウンショウジョウバエのそれぞれに、ヒトのkif3bに相当するklp68dノックダウンショウジョウバエを交配し、得られた子世代のショウジョウバエ(ダブルノックダウン)で運動機能と神経変性が改善していることを確認していた。 klp68dの分子的機能についてさらに検討するため、今度は上記の神経変性モデルの3系統とklp68d強制発現系を交配し子世代の運動機能・神経変性の表現型を確認したが、コントロールと差がなかった。そのためklp68dはノックダウンにおいてMarf、TBPH、cazと遺伝的相互作用を示すと考えられた。 また網羅的遺伝子発現解析において、ダブルノックダウンでは、シングルノックダウン(Marfのみ、TBPHのみ、cazのみのノックダウン)に比べてHsp70の発現が有意に低下していることが示された。これらの結果より、Klp68d(ヒトにおけるkif3b)、Hsp70は神経変性疾患に共通した治療標的となり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画において、1年目にMFN2モデルショウジョウバエとキネシン遺伝子ノックダウンショウジョウバエの網羅的交配によってKlp68Dを治療標的候補として同定した。 2年目にKlp68dの分子動態の解析のため強制発現系を用いて解析を行い、強制発現系では有意な変化を認めなかったことから、Klp68dはノックダウンにおいて神経変性の原因遺伝子と遺伝的相互作用を示す可能性があることが示唆された。また網羅的遺伝子発現解析によってHsp70も神経変性疾患の共通した治療標的となる可能性があることを同定した。 3年目の本年はKlp68d、Hsp70などの候補標的に介入する化合物をショウジョウバエに投与して表現型を確認すること、神経変性へこれらの分子が与える影響をさらに解析することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
Klp68d、Hsp70の分子動態について、免疫染色による局在・分布の変化の解析、ショウジョウバエの行動解析(生存率、運動量)を中心に解析を進める。 Klp68d、Hsp70の発現量を下げる化合物の経口投与による神経変性モデルショウジョウバエ3系統の行動解析を行う(生存期間の延長、運動量の改善など)。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行により研究室の出入りが制限されたことから、想定よりも研究の進行が遅れ、結果的に消耗品に使用する金額が少なくなった。 ショウジョウバエの系統維持にかかるプラスチック容器や飼料、廃棄料、抗体、検査キット、経口投与する化合物などの購入に使用していく。
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