研究課題/領域番号 |
19K16935
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
小暮 洋子 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (60548684)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 内臓痛 / TRP受容体 / 酸化ストレス / 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)は腹痛が慢性的に持続する難治性疾患であり、内臓痛に対する特効薬は存在しない。Transient receptor potential (TRP)受容体は痛み受容体として知られており、サブファミリーが知られている。そのうち、TRPA1、V1/3/4、C1/4/5、M2/7は、活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)によって活性化されるROS感受性TRP受容体であることが明らかとなっている。内臓痛との関わりを調べることで、ROS感受性TRP受容体が内臓痛治療薬の新たなターゲットとなることが期待される。 2020年度は、まず、2019年度に論文投稿中であった大建中湯のIBDに伴う内臓痛および好酸球に対する効果が受理されJGH openに掲載された。 次に、臨床により近い評価方法の検討として、内臓痛が行動に及ぼす影響を調べるため、潰瘍性大腸炎モデルおよびクローン病モデルラットを作製し、IBDモデル動物の内臓痛に伴う行動変化を観察した。14日間の昼夜別の活動量および内臓痛、炎症症状を測定したところ、内臓痛および炎症症状が強い時期には、特に夜間の活動量が低下することが明らかとなった。また、内臓痛と活動量の程度には相関関係も認められたことから、IBDに伴う内臓痛の評価方法の1つとして、夜間の活動量も指標になることが示唆された。 さらに、IBDに伴う内臓痛に関連するROS感受性TRP受容体を調べるため、Naiveラットを用いて、消化管各部位(食道、十二指腸、結腸、直腸)の発現量をリアルタイムPCRにより定量した。結腸や直腸に多く発現しているROS感受性TRP受容体として3種類を特定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大建中湯の大腸炎モデルに対する効果についての論文投稿が完了した。また、IBDに伴う内臓痛の評価方法の1つとして、夜間の活動量も指標になることを示すことができた。ターゲットチャネルの選定方法として、当初予定していたTRP受容体と活性酸素との共存性から特定する方法からは変更したが、PCR実験により、結腸や直腸に多く発現しているROS感受性TRP受容体として3種類を特定することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
IBDモデル動物を作製し、今年度特定した結腸や直腸に多く発現しているROS感受性TRP受容体3種類について、阻害剤を投与し鎮痛効果を検討する。従来の伸展刺激による内臓痛の評価とともに、活動量への影響も評価する。さらにIBD動物を用いて、内臓痛が記憶に与える影響についても調べ、記憶への影響が観察された場合は、同様の方法で阻害剤の効果も確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はPCR実験および行動観察を行い、抗体などの高額な試薬を使用せず、また雑誌の掲載料も不要だったため予定より少額となった。COVID-19の影響により、旅費も発生しなかった。次年度以降、動物や阻害剤の購入、学会参加費などに充当する予定である。
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